日本財団 図書館


One Moment in Time

迷いの表情

プロフェッショナルラグビーコーチ 大西一平

 

ヘルメットを脱いだ瞬間、緊張と興奮から開放され、彼の戦いの精神とともに汗は蒸気となり、地球のどこかに消えて行く。

私には、この瞬間の彼の表情が個人競技のものとは違うように写る。それは屈託のない笑顔でもなく、敗北感や悲しみに包まれた表情でもない。幾度となく私も経験した迷いの表情である。

集団競技では自分の出来と、チームの結果は別物である。直接的な感情はロッカールームに引き上げた数分後に訪れる。

1995年1月8日、その日だけは私の表情は違った。

入社以来神戸製鋼ラグビー部は勝ちつづけ、絶対破られる事はないと言われた記録・新日鉄釜石と並ぶ7連覇の懸かった重要な試合であった。

私はその7年間で数々の名勝負を経験した。ロスタイムでの逆転劇や歴史に残る得点差など……。しかしそれぞれのゲームにおいて、私自身もそしてチームも決してベストな状態で臨んだわけではない。周りに残した印象とは違い、楽なゲームなど一試合もなかった。毎年シーズンが終わると身体はぼろ雑巾のように痛み、1カ月近く何もする気になれないほどだった。

そのシーズンはプレーヤーとしての衰えと重なって、身体の小さな私は年々大型化する日本ラグビー界の中で、しばしばチームの足を引っ張る自分に気づいていた。

チームを数年間リードしてきた私には、周りの評価が下がりつつある現実を痛いほど感じる事ができた。数年前なら周りの評価など気にせず、チームに逆らってでも走りつづけたに違いない。

しかしその時の周りの評価をどこかですんなり受け止める、もうひとりの自分がいる事に気づいたのであった。それは私にとって引退を意味した。「私は私のために、自分のラグビー人生に終止符を打つために、残るシーズンを送る」

そう私は考えていた。

1月8日、社会人大会決勝、相手は東芝府中。

私はまるでボールを追いかける子犬のように、グラウンドを走っていた。

80分間の激闘。

最後に聞いたレフリーの笛が、長くて短かった私のラグビーシーズンの終わりを告げた。ラグビーを始めて17年目の冬。それは初めて心の底から微笑んだ冬であった。

写真の彼は今後どんな選手生活を送るのだろう。できれば彼の最後の微笑みを見てみたいものだ。

 

004-1.gif

SSF世界スポーツフォトコンテスト'98 SSFアワード BRIAN WALSKI(USA)“Full Head of Steam”

 

食体動――東洋医学からみた健康法

2 生命と水の相関関係(前編) 根本幸夫

根本幸夫(ねもとゆきお)1947年東京都生まれ。東京理科大学薬学部卒、東洋鍼灸専門学校卒。漢方薬局「平和堂」店主、薬剤師、鍼灸師。「頭をよくする漢方と食養(世界文化社)」「病気を治す食べ物百科(健友館)」など著書多数。

 

水はこの地球上にあって、もっともありふれた物質である。地球表面の4分の3を占め、普段は特別有り難いとも思わないが、この水がなくてはいかなる生物も生きてゆくことができない。

 

アフリカのボツワナ共和国(南アフリカ共和国のすぐ上)には、オカヴァンゴという特殊な湿地がある。そこはアフリカの真珠と言われるほど美しい地域であるが、普段は砂漠で殺伐としている。ところが、春から夏にかけての数カ月の間だけ、山から雪解け水が流れこんで湿地を造るのである。水が流れこむと同時に植物はいっせいに活動を開始し、緑と花と蝶や小島たちの楽園ができる。近隣のあらゆる動物たちも水を求めて集まり、次の生命を宿してゆく。あたかもノアの方舟が到着したようだという。ここではまさに水が生命そのものである。

オカヴァンゴほどではなくとも、地球上のすべての生命活動は水によってささえられているといってよい。そこで、あらためて生命に対する水の役割と性質を考えてみよう。

地球上に水ほど沢山ある物質はないし、またどこにでもある。そう言うと砂漠には水はないではないかと思う人もいるであろうが、実は空気のある処にはすべて水蒸気として水は存在するのである。ネズミカンガルーやモロフク(トカゲ)、トビネズミなどの砂漠の住人は、みな空気の中から水分を摂る術を心得た生きものたちである。

そしてこの水蒸気こそが、地球の蓄熱器の役割をして、温暖な気候を維持する主役となっている。水の熱容量はたいへん大きく、暑い時は熱を吸収し、寒い時は熱を放射して、一定気温に保つ働きをしている。

また大半の物質は温度が下がると収縮するが、水だけは逆に膨張する。もし水が普通の物質と同じように収縮してしまったら、水は水より重くなり、どんどん水中に沈み、やがてすべての水が氷になり、空気中の水分は限りなくゼロに近づき、地上はどこも砂漠のような温度変化の激しい気候になってしまうだろう。氷の膨張作用は水の水素分子の結合の仕方によるわけであるが、いったんこの水素結合が起こると、温度が0℃以上になっても、全部融けて液体にはならず、30℃くらいまでは水中に氷の結晶骨核が残っている。40℃を越えるとこの結晶骨核はみるみる消えて、完全な液体となる。そして液体中に水の結晶骨核が残っている状態の方が、実は生命活動として都合がよいのである。

(つづく)

 

SPORTS ON NEW WEB!

 

明けましておめでとうございます。年が明けても世の中は相変わらずですが、新年から景気の悪い話ばかりでは気が滅入るだけ。せめてアクティブな生活を送って、心身ともに健やかに過ごしたいものですね。

何にせよ年の始めはスポーツを始める絶好のチャンスです。「今年こそッ!」という気分が冷めないうちに行動に出ましょう。「でも何をやったらいいの?」という人はWeb探検に乗り出してみれば……。ただし、くれぐれもパソコンの前でお尻に根っこを生やさないように。

 

●やっぱり冬はスキー

◇スキーネット

http://www.skinet.co.jp/

雑誌などでも随分紹介されているので、すでにご存知の方も多いかもしれません。「やっぱり冬はスキーでしょう」という人は一度はチェックしてみましょう。

004-2.gif

 

●スノボ派はこちら

◇ネットボーダー

http://www.Jsba.or.jp/

日本スノーボード協会の公式サイト。ゲレンデ情報はもちろん、アマチュア大会スケジュールや初心者向けのスノーボード講座もあります。これであなたもボーダーです。

004-3.gif

 

●とりあえず走りましょうか

◇ランネット

http://www.runnet.co.jp/

ランナーのバイブル雑誌『ランナーズ』のサイト。ロードレースに関する情報量は圧倒的といっていいでしょう。春先のレースを見つけて、それを目指して今日からジョギング開始っていうのはいかがでしょう。

004-4.gif

 

驢馬の目

 

元旦の天皇杯優勝で横浜フリューゲルスーは終った。吸収が決まってからの頑張りは心打つものがあったが、常日頃この気持ちで闘ってやればこういう結末にならなかったのではと思うと、残念でもある。企業の論理だけで、秘密裡に行われた吸収合併交渉と批判されるが、そもそも全日空スポーツ株式会社は利益を追求し、利益を出資者へ分配しなければならない。数期無配が続き、赤字が累積すれば吸収、合併、解散は当然の帰結だ。百年構想として地域総合型スポーツクラブ創設を理念に持つJリーグをチームが、なぜ株式会社なのか、最初からボタンの掛け違いだったのではないのか。

日々、地域総合型スポーツクラブの設立と運営の方法を議論しているSSFとしては、このたびの破綻は、チャンスに思える。サポーターは存続のために署名連動を展開したが、優に十万人から一人一万円を募金すると十億円になる。これだけ集められればスポンサーも付いてくるだろう。十万人の会員は貴重である。彼らの三人に一人が試合を見ると、入場料収入は計算できる。また一万円の年会費を毎年払い続けてもらうために、クラブも会員メリットを増やす努力を必死で考える。

十万人から一万円ずつ集めると言ったら、出入りの銀行の人が、小さな支店でもやれる規模と平然と言った。

社団法人日本プロサッカーリーグは、あっさりあきらめたわけでもないだろうが惜しいチャンスを逃がした。サポーターは、NEVER GIVE UP! チャンスの後ろ髪でもいいから掴んで引き回したらいい。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION