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ドイツに学べ

スポーツクラブ先進国

byアクセル・ベッカー

第1回 ドイツにおけるスポーツクラブ

『このコーナーは、福島大学の黒須充助教授にコーディネートしていただいています。』

 

ドイツでは、2,500万人を超える人々が85,000ヶ所にも及ぶスポーツクラブのいずれかの会員となっています。フィットネススタジオ等の商業的なスポーツサービス提供者の参入による競争の激化にもかかわらず、スポーツクラブの会員数は増加しつづけ、新しいスポーツクラブが次々に設立されています。

では、なぜドイツでは、地域のスポーツクラブがこのようにダイナミックな発展を遂げ、高い社会的評価を得ることができたのでしょうか。

その問いに対する第一の答えは、スポーツクラブの会員になるために、それほど高い費用を必要としないことであると言えるでしょう。会費の安さが『スポーツ・フォア・オール』の不可欠な前提条件なのです。そのため、スポーツクラブにたくさんの子供たちや青少年が加入していることもとりたてて驚くべきことではありません。

第二の答えは、スポーツクラブが至るところに存在するということです。大都市のみならず小さな村にさえもあるのです。

そして第三に、スポーツクラブの提供するサービスが実に広範囲にわたっていることを挙げなければなりません。

スポーツに関連した身体活動のほとんどは、スポーツクラブによって提供されていること。更に、スポーツクラブが、スポーツ以外にも、フェスティバルや演奏会、旅行といった実に多種多彩な余暇活動を提供しており、スポーツクラブが地域における社会的・文化的生活の基盤として、確固たる地位を築いているということも忘れてはなりません。

ただし、『典型的なスポーツクラブ』といったものは存在しません。1〜2種目程度のスポーツしか提供しない会員数30名程度の小規模なクラブから、数千人の会員を擁し、固有のスポーツ施設を持ち、何十種類ものスポーツを提供する150年以上の歴史を有する大規模なクラブまでその規模や形態は様々です。

規模や組織、提供するスポーツ種目に違いはあるにせよ、これらのスポーツクラブはどのような役割を果たし、どんな共通点を持っているのでしょうか?

スポーツクラブの最も重要な資源は、エーレンアムトリッヒ(名誉職)の存在です。つまり、会員により、自発的に、無償で行なわれるボランティアとしての協力活動です。スポーツクラブは会員によって民主的に選出された役員会によって運営されています。この役員会(およそ5〜10名で構成される)は、クラブのさまざまな決定権を持ち、管理運営を引き受けます。更に、この役員会は、各部門(これらは多くの場合、提供されるスポーツ種目に対応している)で同様に選出された代表者からも協力を得て活動しています。

誰でもスポーツクラブの会員になることができます。クラブは会員の自主的な運営により成り立っていますが、会員としてのわずかな会費を支払うことを別とすれば、会員であるために果たさなければならない義務は何ひとつ発生しません。そしてその月会費はおおよそ映画館の入館料程度のものなのです。

実際にスポーツの指導を担当する人は、スポーツ連盟によって養成された資格を持った指導者です。もちろん、その多くは本来の職業を持ちつつ、ボランティアとして活動している人たちです。彼らはその活動に対してわずかな報酬・手当を受け取りますが、これは多くの場合、自己の出費を補填する程度のものにすぎません。

施設に関していえば、固有のスポーツ施設を有しているクラブはわずかに過ぎません。スポーツ活動は市町村からクラブに無料で貸与される公共のスポーツ施設を拠点として行われています。

ドイツのスポーツクラブには、これまで述べてきたことの他にもう一つ重要な役割があります。それは、公益に資する社会政策的な任務を遂行しているという点です。つまりスポーツクラブは、もしクラブが存在しなかったら国や地方自治体が別の形で果たさなければならなかった役割を補完しているのです。そうした役割とは青少年の健全育成、国民の健康保持、あるいは失業者や高齢者といった社会的弱者に対するケアということです。したがってドイツのスポーツクラブは、単なる『スポーツサービス提供者』を遥かに上回る社会的な存在といえるでしょう。

 

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Axel Becker

 

1955年ベルリン生まれ。ケルン体育大学卒業後、クライスノイス・スポーツ文化局に勤務。ケルン体育大学とタイアップした生涯スポーツ振興策「4つのドアモデル」の担当者の一人であり、実際にクライスノイスにある各スポーツクラブに対して、様々な指導・助言を行っている。

 

こまつなおゆきの「元気の作り方」講座 ●第3回

 

充実した質の高い眠りを貧る。

計画的、かつ建設的な就寝法

 

「元気のもとはよく眠ることだ」とは真理ですが、よく眠るためにはそれなりの準備や努力を要することを忘れがち。疲労の果てにしかたなく眠るようでは翌日の実力発揮は望めません。環境を整えて戦略的に眠る。気合いを入れて一所懸命眠る。実り多き幸せな眠りのためにすべきことを考えてみましょう。

 

秋から冬は眠るのにいい季節。気温や室温が17度から20度くらいで、湿度が50から60%パーセントというのは最適な条件。もちろん個人差はあります。24度以上では眠りが浅くなり、睡眠時間も減るという報告もあり、また温度が低いと不快な夢・悪い夢を見がちだとも言われています。

睡眠環境としてチェックすべきは音です。睡眠中の脳波を調べてみると、音が覚醒反応を起こさせるのがわかります。深い眠りのときでもちょっとした物音によって眠りは浅くなります。一度も目覚めることなく朝まで眠れたとしても、音によってじゃまされているおそれがあるということです。しっかり寝ているつもりなのに寝不足感のある人は、夜中に騒音が無いかを点検してみてください。ことによるとあなたが眠ったあとの丑三つ時に、毎晩決まって隣人がエレキギターをかき鳴らしているかもしれません。騒音を消せない場合には、睡眠用の耳栓が市販されているので試してください。

柔らかいベッドでは、からだが沈み込んで部分的に負担がかかるような姿勢になりがちです。それを修正しようとして、一部の筋肉が緊張し続けることになって眠りが妨げられることもあります。また、睡眠中には筋肉が弛緩する段階があるので、好ましからざる姿勢が修正されずに靭帯や関節のクッションである椎間板を傷めることも。寝返りが打ちやすいことを基準にして少し固めの寝具を選びましょう。かけ布団や寝間着も睡眠中のからだの動きを妨害しないようなものを選びます。睡眠中は汗が出やすくなっており、眠りが深いほど汗の量は増えますから、吸湿性のよい素材であるべきは言うまでもありません。

さて、眠りは単なる機能停止ではなく、きざまな機能強化です。たとえば免疫系。眠りが不十分だと病気になりやすいのは言うまでもありませんし、風邪をひいたら眠って治すのがお約束です。強いストレスがあったときにもカラダは眠りを求めます。

毎晩の眠りで活躍するのは成長ホルモン。寝入りばなの30分間に分泌され、カラダのあちこちで細胞分裂を促して、くたびれたり壊れたりした組織を修復します。「美しさは夜つくられる」と言われるのも成長ホルモンのなせるワザ。新しくて活きのいい細胞がたくさん作られれば、肌もつねにみずみずしく若々しい状態に保たれます。日中、できるだけからだを動かすとこの成長ホルモンの分泌量が増えるというのがポイントです。

さらに効果的なのは眠る直前のウエイト・トレーニング。まじめなスポーツ選手ならすでにやっていることですが、筋肉に大きな力を出させるエクササイズをしてから寝ると、まるで蛇口がひねられたように成長ホルモンの分泌がよくなります。

眠っている間に新しい細胞が作られるなら、その細胞を作る材料をあらかじめ仕入れておかなくてはなりません。食事です。ダイエットと称して夕食を減らしたり抜いたりするケースもあるようですがナンセンスの極み。細胞作りにはあらゆる栄養素が必要です。蛋白質はもちろん、脂肪も細胞膜の材料ですからある程度食べなければ。

というわけで、睡眠を建設的にするためのシナリオは、毎日、しっかり運動する時間をつくること。それが無理でも、なるべくよく歩いて一日を活動的に過ごし、夕食には様々な食材料を使ったバランスの良いメニューをしっかり採る。消化吸収のために食後2時間くらいとって、ベッドに入る直前に腕立て伏せや主体起こし、あるいは鉄アレイで筋肉に負荷をかけてから眠る……。

睡眠は一日周期のリズムです。成長ホルモンの分泌量が比較的多い時間帯は夜10時から夜中の2時だという調査結果があるので、毎晩同じ時間に就寝して10時から2時の間には熟睡していることも重要です。

 

小松直行

1960年横浜市生まれ。筑波大学卒。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了、同博士課程中退。資生堂研究員を経て95年より日本女子体育短期大学講師。

 

SSF・TOPICS

http://www.ssf.or.jp/

E-mail:info@ssf.or.jp

 

SSF世界スポーツフォトコンテスト'98

写真展開催地募集

 

あなたの町でもスポーツ写真展を開催しませんか!?

SSFでは世界50カ国から届いた12,000点の応募作品の中から選ばれた141点の入賞・入選入作品を無料で貸し出しています。会場の手配と装飾、写真パネルの輸送料等だけで感動の写真展が開催できます。このチャンスに「ぜひ、我が町でも」という方はご連絡下さい。展示用写真パネルは一式しかありませんので早い者勝ちとなります。

連絡は企画課まで。03-3502-3778

 

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写真展開催にあわせて全入賞作品を集めた写真集(A3版・フルカラー)も準備しています。

 

これは使える!SSFの新サイト

SSFのサイトにあるサーチエンジンが充実しました。サーチエンジンとは、インターネットの道案内。だれでもお望みのサイトへひとっ飛び!

インターネットってむずかしそう、と尻込みしているあなた。だまされたと思ってSSFのサイトを覗いてみてください。まるで飛び石の上をポンポンと跳ねるように、世界中のサイトにリンクできます。ちょっとしたお出かけ前、お買い物情報から、海外旅行に行く時に現地の天気を調べるなんてことも。

スポーツに限らず、あらゆる情報を集めるには持ってこいのSSFサイト。ホームページともども、どうぞよろしく。

http://www.ssf.or.jp/

 

「スポーツライフ調査1998」もインターネットで

今年6月、「スポーツライフに関する調査・1998」が全国で一斉に実施されました。今回は調査対象をこれまでの2000人から3000人に増やし、調査項目もスポーツ人口の量的・質的把握はもちろん、新たに促進要因やスポーツボランティアの項目を加え、より充実した内容になりました。調査報告書は12月にSSFより刊行予定です。待ちきれない方のために、調査結果の速報をSSFホームページ上で公開しております。ぜひご覧ください。

 

 

 

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