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One Moment in Time

遊ぶ、楽しむ、スポーツ。

スポーツライター 増田明美

 

ケラケラケラッと、笑い声が聞こえてきそう。おそらく草むらの中の二人は少年なのだろう。もしかすると将来のマグワイアなのかもしれない。ただ、この瞬間はルールも勝負も、ましてやプレッシャーさえもまったく見当たらない。服を汚して昨日お母さんに叱られたことさえも忘れてしまっている。純粋な瞳でただひたすらボールを追いかけて、追いかけて……。「スポーツ」の語源は戯れる、楽しむ、見せびらかすとあるが、イチローとてルールブックを見て野球を始めたわけではなく、首位打者を目指していたわけでもない。掛布を見てカッコイイと思って始めたと言う。中学生のとき、私もアニメの「エースをねらえ」に憧れてテニスを始めた。きっかけなんてそんなもので、決して強くはなかったが本当に楽しかった。うまくなりたいと思い、陽が沈むまでひたすらラケットを振り続けていた。

その頃、さらなるひとつの出来事を目の当たりにすることになる。何気なくつけたテレビの中で福岡国際マラソンを激走する瀬古利彦さんに出会う。42キロまで先頭を行くイカンガー選手についていき、ラスト100メートルで抜き去るという衝撃的な映像だった。レースもさることながら、その後の故中村清監督の言葉。すべてはそこから始まった。

 

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SSF世界スポーツフォトコンテスト'98 SSFアワード THOM VOLLENWEIDER(USA)“Playing the Field”

 

「天才は有限、努力は無限」。私の中で何かが動き始めた。

指導者に恵まれたこともあり、記録、結果が意識よりも先に走り出した。結果を追いかける自分に何の疑いも持たず、肉体的に精神的に自分をどんどん追いつめた。勝敗と記録の事だけを考え、結果を出せば出すほど、プレッシャーはどんどん大きくなっていったのだった。「走ること」を楽しまず、「勝つ」ことを楽しんだあの頃。

周りの期待がため息に変わった。そんなとき、ブラジル人のルイーズコーチの言葉が私を救ってくれた。「良い結果は自分がハッピーに生きていると感じたときに生まれるんだよ」。札幌ハーフマラソン出場前に豊平川の河川敷でジョギング途中、練習中のサッカー少年たちに出会い、自らその輪の中でサッカーを楽しんだブラジルのドス・サントスさん。一緒に走った20キロメートル走の途中でコースを外れ、帽子にこぼれんばかりのブルーベリーを摘んで「これでジャムを作るのよ」と笑顔で戻ってきたジョン・ベノイトさんを思い出す。

私も生まれて初めて走ったときは、ただ無邪気に走ることが楽しかったなあ。幼い頃、稲刈りの後のもみがらの香ばしい香り漂う中で父と弟とキャッチボールをした日の記憶がセピア色に蘇ってくる。

大切なものをどこかに忘れてきていませんか? スポーツごころ、弾ませてっ。

ほら、また聞こえた……。

「ケラケラケラッ」

 

食体動――東洋医学からみた健康法

1]先天の気と後天の気 根本幸夫

 

根本幸夫(ねもとゆきお)1947年東京都生まれ。東京理科大学薬学部卒、東洋鍼灸専門学校卒。漢方薬局「平和堂」店主、薬剤師、鍼灸師。「頭をよくする漢方と食養(世界文化社)」「病気を治す食べ物百科(健友館)」など著書多数。

 

東洋医学の立場から私たちの健康について考えてみよう。

漢方の古典「素問(そもん)によれば、私たちのからだの強度は先天の気と後天の気の融合によって決まるという。

先天の気とは親から受けついだ遺伝的要因であり、私たちのからだの設計図である。それに対し後天の気とは私たちのからだの構成材料であり、またエネルギー源となる食物と水と空気である。もし先天の気である設計図が悪く、後天の気である材料が悪ければ、よいものができるわけがない。今さら親は代えられず、設計変更はできない。だとすれば、私たちが強いからだを造るためには、自身の設計図の長所と欠点を知り、その長所を伸ばし、欠点を補う「材料」を探し出すしかないのである。

そこで、まず自身の設計図の概要を知ることである。厳密に言えば、DNAから遺伝形質を探るということになるが、もっと簡便な方法もある。それは両親や兄弟姉妹、祖父母、叔父叔母の体質や患った病気をチェックすることだ。係累にがんを病む者が何人かいれば、その形質を受けつぐ可能性は高い。両親が高血圧やアレルギー体質(鼻炎、喘息、アトピー性皮膚炎など)、若ハゲ、リウマチなどの症状を抱えていれば、その子も同様の体質である場合が多い。さらに、これまでに自分がかかった病気や、季節によってくり返す症状(たとえば春先の花粉症、秋田の喘息、過度の生理痛など)をチェックすれば、体質の大よそは知ることができる。

自分の体質の特徴を把握したら、次は適正な「材料」の選択である。

食物と水と空気のうち、空気は付近の環境全体の支配を受ける。いま問題になっているダイオキシンや、排気ガスが引き起こす喘息、排気ガスと花粉によって起こる花粉症などの問題は、個人というより自治体ぐるみの環境整備によらなければ解決はできない。重症者は転居するしかない。

昭和38年まで日本にはなかった花粉症が、今や5人に1人とまさに国民病となってしまった。だいたい昭和30年代半ばまで、杉と日本人は共存できていたのである。私が子どもの頃は、杉花粉の飛ぶ季節にわざわざ杉の木をゆすって花粉を散らし、頭をまっ黄色にして遊んだものだ。

杉花粉を中心とする植物の花粉群の反逆は、大気を汚された植物たちの悲鳴であり、人類に対する警告と捉えることもできる。もはや排気ガスの多い都会のどこに転居しても根本的解決にはなりそうもない。

ならば、どうするか。残る「材料」は食と水、次回から具体的に述べていく。

 

SPORTS ON THE WEB!

 

気がつけは寒風吹きすさぶ季節。「外に出て体を動かそうと思いつつも、暖房の効いた部屋でパソコンの前に腰を落ち着けてしまう時間も長くなりがちです。せめてスポーツや健康に関係するサイトを覗いて、体を動かすきっかけをつかもうではありませんか。

 

●あらゆるスポーツの世界選手を知る。

◇worldsport.com

http://www.worldsport.com/

 

準加盟を含めて88の国際スポーツ団体が加盟するGAISF(国際スポーツ団体総連合)のサイト。いろんな競技の世界選手権や、IFのニュースなど盛りだくさん。

 

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●身近なプールを教えてあげましょう。

◇水泳王

http://www.asahi-net.or.jp/~na6h-ksi/suiei.html

 

いつものプールが休みでも泳ぎたい。出張先でも泳ぎたい。という水泳中毒者の情報交換をねらったサイト。

誰ですか? 併設の焼肉王の方がいいって云う人は。

 

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●カロリー摂りすぎ?

◇すぐわかる栄養成分ナビゲーター

http://glico.topica.ne.jp/cgi-bin/glico/gonavi.cgi

 

食べたものを詳しく入力すると、カロリーや栄養素のバランスを診断してくれます。入力項目が細かくて戸惑うかもしれませんが一度試してみてはどうでしょう。

 

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驢馬の目

 

休日には、狭い畑の手入れやローンボウルスをする。スポーツの実施種目の国際比較をみるとニュージーランドやカナダでは、ガーディニングがそれぞれ第1位、第2位にランクされている(SSFスポーツライフ・データ'98)。

ローンポウルスは、会員40名ほどのクラブで、第2・4土曜の例会と第3日曜にボランティアで教室を開く。7割以上の会員がグリーンまで一時間以上の遠方に住むため、イギリスやオーストラリアなどのように週4〜5回の例会にはほど遠く、しかも土・日曜にしかできない。

本年4月からは、週2日休める週40時間労働の適用を受ける人は、日本の労働人口の85%になったという。また高齢社会も急速に進んでおり、学校5日制も進展しよう。これらの人々が気軽にスポーツを楽しむためには、それに見合う身近なスポーツ施設が必要で、30%の男女から要望されている(SSFスポーツライフ・データ'98)

実施率の高いスポーツ種目は5〜8割の人が、15分以内でアクセスできる施設を利用している(SSFスポーツライフ・データ'94、'98)。一方、実施率の低いいわゆる生涯スポーツは、身近に施設を確保することができなくている。スポーツ・フォア・オールの実現のためには、整備の遅れている種目の専用グリーンや総合スポーツ広場など、幅広い年齢層の人々が身近でスポーツを楽しむことができる「場」の確保が急務である。

 

 

 

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