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はじめに「結核とは何か」という演題を盛り込みました。また、結核対策が「対費用効果が最もよい政策である」という政策面に関連したトピックを挙げ、結核対策に地方政府の協力がいかに重要かということを訴えました。全国22アイマックのうち19アイマックの知事の参加が得られ、結核担当医師との交流の機会も持たれたことから、今後の政策への反映に期待が持てそうです。

医師対象のワークショップは、参加者のほとんどが知事対象のセミナーにも出席しており、また、第1、2回のセミナーから続けて参加している医師も多く、基本的な知識は十分であると考えられました。そこで、なるべく参加者が積極的に発言できる機会を設け、対策の問題点は何か、DOTSはなぜ有効か等の講師の質問に参加者が答え、議論していくという形式で行われました。そのほかに、接触者検診や副作用などの新しい内容も紹介され、これまでのセミナーで得たものを確認しつつ、より充実した結核対策に向けての知識を得るよい機会となったことだと思います。

 

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参加者の間を歩きながら意見を求めるスードル医師。活発な議論が交わされた。

 

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視察した結核病院の患者。設備等改善すべき点は多い。

 

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結核担当医師対象ワークショップ参加者とスタッフ。

 

今後の課題

NTCスタッフの尽力で大きな進展を遂げているモンゴルの結核対策ですが、特にX線機材などの病院・診療所の設備面の問題、いまだに胸部外科治療がかなりの頻度で行われているなどの臨床面の問題が見られました。また、ワークショップでの結核担当医師の発言で、政府が頻繁に変わるため担当者の異動が多いこと、遊牧民の脱落の多さ、囚人の結核についての問題が議論され、真冬の密閉されたゲル(モンゴル人の住居である移動式テント)の中での集団感染のリスクと併せて、モンゴルならではの対策の難しさを感じました。

また、95年から行われているデンマークのプロジェクトが来年3月で終了ということで、今はプロジェクトで全額カバーされている薬の供給を、今後どうまかなっていくかということも課題となってきます。

 

終わりに

モンゴルはウランバートル市内でも例年8月後半に初雪が降り、真冬にはマイナス40度にもなるという厳しい自然環境の中にあります。また、90年に社会主義体制から開放経済体制に移行して以来、市内にはレストランやバーが年々増え、街を歩く人々の服装もあか抜けていましたが、一歩郊外に出ると大草原の中、昔ながらの遊牧の生活を営んでいる人々の姿が見られます。

このような独特の環境の中で、ツォクト所長をはじめとする結核研究所国際研修の卒業生の活躍がめざましいNTCを中心に、モンゴルの結核状況は大きく改善されました。今後は先に挙げたような問題を解決するため、本会も何らかの形で協力を継続していけたらと思います。

最後に、このセミナーを後援いただいた日本財団に謝意を表します。

事業部普及課 増田恵子

 

 

 

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