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トルコに近いアレッポなどがある北部とジョルダン国境側のダマスカス、また内陸のデリゾールでは多少気温差があり、アレッポは南部や内陸地よりも夏は涼しく冬も寒い。しかし、一般的にどの都市も夏は暑さが厳しく、平均気温は夏(4〜10月)35度、冬(11〜3月)12度と寒暖の差がある。

4] 砂漠地域

イラクやヨルダンまで広がる広大なシリア砂漠はシリアの国土のかなりの割合を占める。白っぽい色をした砂地の不毛な土地が延々と続き、時折ベドウィンの集落がぽつんぽつんと姿を現す。言うまでもなく夏は非常に暑く、降水量は大変少ない。夏の平均気温は40度から50度近くまで上昇することもめずらしくない。

 

(3) 政治・国際関係

1] 政府

シリアの政治体制は、1973年の憲法によって、社会主義共和制に基づくものと規定されている。元首は、任期7年(再選可)の大統領であり、バース党地域指導部の推薦及び人民議会の指名後の国民投票によって選出される。1970年以降は、ハフェズ・アル・アサド大統領が4期連続で大統領職にある。大統領は3名の副大統領、首相及び3名の副首相の任命権を有するほか、首相の提案に基づいて他の閣僚を任命する。また、大統領は国軍の最高司令官も務める等、強力な権限を有する。現在のゾアビー内閣の大半は、バース党のメンバーで構成されている。

2] 議会・党

シリアの議会は、国民の直接選挙による一院制であり、立法機関としての役割を有しているが、議会の閉会中及び「絶対的な必要性がある場合」には、大統領自身が立法権を行使できる。シリアにおいては、1963年以降、バース党が支配政党となり、73年憲法では「社会及び国家を指導する政党」として特別な地位が与えられている。

議会内の議席配分でもバース党が全議席の55%(135名)を占めているが、加えて、バース党は、アラブ社会主義連合党やシリア共産党等の全ての既成政党とともに「国民進歩戦線(NPF)」という名称の与党連合(現在167名で全体の67%)を構成し、議会内の優位を不動のものとしている。(なお、与党連合以外の議員は全て無所属である。)

3] 内政

アサド大統領は、11970年11月に政権を掌握して以来、自らの出身母体であるアラウィー派(シーア派の百派で、国内少数派)をバース党及び軍・治安機関の要所に配置することで国内体制を固めた。また、政府レベルで多くのスンニ派(国内多数派)を登用することによって国民の政治的不満を最低限に封じ込めるとともに、インフラの整備や経済の部分的自由化などによって国民の生活水準の向上に務め、過去の内政上の危機も克服して、95年11月にはアサド政権樹立25周年を迎えた。96年5月、ダマスカスやアレッポ等で数件の爆破事件が発生し、時を同じくして石油大臣等に関するスキャンダルが露見したが、アサド政権には殆ど動揺は見られていない。アサド大統領の権力基盤を支える人物としては、外交面におけるハッダーム副大統領及びシャラ外相、軍関係ではシハービ参謀総長、治安関係ではアリ・ドゥバ国軍情報部長官などがあげられる。

 

 

 

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