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4. WAAS用に特有な処理の解説

以下、WAAS受信機に特有で、今回ソフトウェアの設計で新たに考慮した項目について記す。

 

4.1 プロバイダの異なる衛星の扱い

わが国の周辺ではMSASはもちろんのこと、POR、IORと最大三つのプロバイダの異なる衛星からの信号を受信出来る可能性があり、これら複数の情報をどのように使用するかが、ソフトウェア設計上の問題としてある。

例として、表4.1のように、9個のGPS衛星とMSAS,POR,IORを追尾して測距情報が得られており、MSAS、POR、IORからいくつかのGPS衛星に対して補正値が得られている場合を考える。

GPS1〜9のみの測距情報の利用から考えると、MSAS、POR、I0Rいずれを選択してもそれぞれディファレンシャル補正を行って測位を行うに必要な5個の衛星が存在する。しかしより精度の高い測位結果を得るためには、使用する衛星の数を極力増やすことが望まれる。例えば、GPS1〜5をMSASで補正し、GPS6、7をPOR、8、9をIORで補正すれば、9個全てのGPS衛星を測位に使用することが出来る。

 

表4.1 GPS衛星に対して、補正データを放送しているWAAS衛星の例

061-1.gif

○印はWAAS衛星が当該衛星の補正値を放送していることを示す

 

MOPS2.1.1.4.10項では、「精密進入以外では複数の衛星の補正が混在出来ること。異なるプロバイダの衛星を混在させる場合にはプロバイダ間の基準時刻の差に留意すること。各衛星の高速補正と長期補正データは同一のプロバイダからのデータを使用しなければならないこと」の記述があり、プロバイダの異なる複数の衛星からのメッセージを混在させての使用を禁止してはいない。しかし基準時刻の差に対する対処方法が示されていないため、メッセージの混在は評価段階に於ける検討テーマとして残すこととし今回は混在を行わぬよう設計した。

機上受信機では、プロバイダの異なる補正データを同時に使用して測位は行わないが、プロバイダの差による測位結果の比較は興味のあるところであるので、測位は各プロバイダ毎に独立に行い、同時に最大3個のWAASによる補正を行った結果と、GPS単独の測位結果を得ることが出来るように測位演算部を構成した。

表4.1の受信状態の例では、

1) GPSl〜9を使用したGPS単独測位結果

2) GPS1〜5、MSASの測距情報と、MSASが放送した補正データによる測位結果

 

 

 

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