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シート86

 

行政サービスに対する国民の声

 

行政には、国民から様々な声が寄せられます。下記は、日本の新聞に掲載された行政サービスに対する投書です。こうした国民の声をよく聞き、よりよい行政サービスの参考にするという姿勢が大切です。

 

○ 福祉行政には温かさが必要

東京都内で母親と息子が餓死するという悲しい事件があった。母親がつけていた日記から、居住区の行政担当者が、その生活実態をある程度把握していたにもかかわらず、一歩踏み込んだ対応がなされなかったことから、今度のような事件に至ってしまったということが明らかになった。プライバシーの尊重は当然だが、それを理由に何もできなかったというのは言い訳に聞こえてしまう。

私のかかわる民間の「女性のための相談室」にも、もう少し行政側が考えて対応してくれたら、と思われる内容の相談がある。たとえば、「母子寮に入りたい」という言葉のみで判断するのではなく、その言葉の裏側にある窮状を丁寧に聞いてほしい。孫の面倒と息子の暴力に疲れ果てた母親は、孫を引き取って世話できるところはどこなのか、自分なりに考えて「母子寮」といったまでで、精一杯の自分の窮状を訴える言葉だった。それに対し、「あんたは母子寮の対象じゃない」と言われたという。

また、当事者が夫の暴力を恐れて居住地を離れ、生活保護の申請を行うと、福祉事務所同士で押しつけあいをしてみたり、定住外国人に対しては話も聞いてくれないという不満が起こったりしている。

こういう行政の姿勢の被害者は、弱い立場の当事者であり、もの言わぬまま死ぬしかないという、今度の事件につながっていくのだと感じた。

 

○ 一般公務員の誠実さに感謝

私はある離島に関して調べてきている。研究調査に関係したある官庁への何度もの質問や問合せなど私の身勝手な要望に対して、係の方はいつも快く親切に応答していただいてきた。

ある日、絶版になった本の一部がコピーして送られてきた。私にとっては貴重な資料だけに小躍りして喜んだ。早速、この好意に対して感謝の意味でささやかなお礼の贈り物をした。

ところが、数日後資料と一緒に図書券が送られ、そこに次のような手紙が入っていた。「先日は、大変なお心遣いを頂きまして誠にありがとうございます。みなさんのご質問等にお答えするのも、私どもの重要な業務であり、公僕としての使命と考えております。大変失礼かと存じますが、今後このようなお心遣いは、なさらぬようお願いいたします。みなさまのお役に立て、喜んでいただけることが、私ども公務員としての最高の誇りです。」

私の安易で、軽率な行為を丁重にたしなめられた手紙と、多分個人負担したであろう図書券を前に、私自身恥ずかしく赤面してしまった。一連の高級官僚の腐敗のニュースを読むにつけ、この手紙は、昨今の官庁不信の中で何か救われたような気持ちを与えてくれた。

 

 

 

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