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正月行事………正月はほとんど興行で外に出ていますから、宿舎の正面に棚を吊り、神農(中国で祀られている薬を司る神様)を祀り大きな餅を飾ります。そして事務所(分方)で世話をしてくれる人、ここだったら西村太吉さんと坂田春夫さんの名前を書いたお札と、大き目の鏡餅と一緒にお供えする。うちからは太夫元の初太郎の札と大き目の鏡餅を、そして、私たちの家族や一緒に働いている人の名前を書いた御札や動物一同の御札も供え、商売繁盛と無病息災をお祈りするのです。また正月行事で商売の神様、鎌倉の銭洗弁天様にお参りに行きます。一月二十日に熱海で新年会と総会があります。

私の父………大寅興行社を作り上げたのは私の父、大野寅次郎です。明治二十七年に、大工の息子として東京で生まれました。早稲田大学に受かって入学する時に、兄弟の反対に遭い、伯父さんの大野長太郎のいる岐阜県美濃町へ行きました。その時、叔父さんは大野長洋行を率いて楽団、レビューや魔術の見世物を興行していましたから、寅次郎はその手伝いをしに行きました。そのうち小物を大八車に載せて見世物として独立しました。東京都内を廻ったそうです。最初のうちはガリマキという、箱に鏡をいれたトリック箱のようなものをみせていたったんじゃないですか。美濃町の伯父さんは、中国(満州)を中心に廻っていたようです。

 

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豪華な作りの蛇姫殿、寅次郎さんの発案によるものという

 

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大寅興行社の楽団と舞踊ショー

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今も掛けられている絵看板

 

 

 

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