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この小屋は中荷といっている。本来、小屋は大きさと興行する種類によって三つにわけられ、曲芸、サーカスを興行するため大きな小屋を大荷(おおに)、見世物の中くらいの小屋を中荷(ちゅうに)、さらに手品などの小物である。

見世物小屋の内部は、舞台とお客が見るカケアガリに分かれる。サーカスの場合は、カケアガリが大きく、舞台の前のほうには茣蓙を敷きその上に座布団を敷き座る。その後ろには傾斜のついた立ち見席を作ったという。かぎられた空間を最大利用している。

二日間で小屋掛けは完成する。祭りの当日の午前中、大鳥居から八〇メートルくらい続く参道の両側には、いろ鮮やかなテントで設営された露天商がギッシリと軒を並べていた。午後からの準備に大忙しで、働く人々に殺気立った緊張感がみなぎっていた。

 

◎大野裕子さん◎

 

荷方と歩方………昔、靖国神社では今のように桜の木がなかったので、サーカスが二軒出ていました(見世物小屋を入れると十軒)。興行ができないように戦後植えたんですよ。戦後、十余年間、店は出なかった。御霊祭りには人も少なくなってしまったので、神社の方で慌ててたのみにきた。ここ二十年はこういう形態です。今はここに水があるからとか、電気があるとか、使ってくださいととても親切です。祭りや縁日に出店する露天商には、ジンバイとコロビがいまして、前の日当たりから店を出せるのが地元のジンバイで、当日店を組み始めるのがコロビで、地方からくる人が多いです。私たち東京で興行を打つ場合、西村さんの松坂屋と坂田春夫さんの会津家さんの分方にお願いします。分方さんのなかにはコロビ(露天商)の権利もあり、興行の権利を持っている人もいます。昔はその方が多かったのではないでしょうか。現在、興行する人が少なくなってしまっていますから、露天だけになってしまいます。

 

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お化け屋敷の木戸に立つ大野裕子さん

 

 

 

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