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しかし、過疎化や高齢化による管理の担い手の不足、減反政策などの影響によりやむなく放置される農地や森林の面積は拡大しているのが現状である。

そこで、幹線道路に沿った景観や後述する回遊ルートに沿った景観、またそれらから高い頻度で眺められる景観は優先的・計画的に管理を行うことが必要であろう。

将来的には、農林業を始めとする自然への働きかけの活動が地域の景観の質を維持している(水資源の涵養など環境保全にも寄与している)という認識を社会的にも明確化し、「景観(環境)の計画的管理」という視点に立って、しかるべき経済面での措置が考えられるべきであろう。

 

5 ハサ木による地域景観の演出

仙田郷全体の景観のレベルアップをはかる一方で、地区を横切る幹線道路として通過交通の多い国道252号線沿道や、現在計画中の「道の駅」機能をもつ拠点施設周辺においては、積極的に仙田郷特有の景観を創造・演出し、仙田郷の魅力をアピールすることも一つの方法であろう。仙田郷の景観の特徴として、様々なハサ木がみられることから、国道沿いの空間的に開けた1km程の区間に並木状にハサ木を植栽し大規模なハサ木の回廊を形成することや、拠点施設の周囲に修景を兼ねた様々な形態のハサ木を設け「ハサギの里」をアピールすることも有効な方法として考えられる。

 

6 外来者が仙田地区の景観を体験できる仕組みづくり

「景観の特徴」の項でも述べたように、仙田郷の集落の景観は展望台などからひとつのまとまりとして眺めることが難しい場合が多く、むしろ自分の足で集落をめぐりながら新しく展開する景観への期待に胸を膨らませたり、自然や美しい景観の思わぬ発見、地元の人との出会いなどを楽しむことができるところにその魅力があるといえよう。

農村景観のような「地」の景観は、雄大な自然風景のように強烈な感動を与えることは少ないが、四季それぞれ訪れそれに馴染んでいくほどにその魅力や味わいが理解されていくという特徴がある。仙田郷の自然環境や景観、歴史への正しい理解、地元の人々とのふれ合いを深めようとするならば、こうした利用(「仙田郷・出会いと発見の旅」)を促進することこそが最も有効な方法であると考える。そのためには、各集落(地区)をめぐるルート設定と、休憩や人々との出会い・語らいの場となる拠点施設の整備が必要であろう。また、地元の人々にとっても、出会いや語らいの中で地域の魅力や味わいを伝えていくという、ハード・ソフト両面からの仕組みづくりが必要である。要は、利用者にどれだけ充実した景観体験の機会を提供できるかにかかっているといえよう。

 

以上、仙田郷の地域活性化に関して、環境・景観面からの提案というかたちで課題と方向性について述べてきたが、次年度は本格的に計画案を検討したいと考えている。

 

 

 

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