3 仙田郷の景観スケールに配慮した構造物の整備
仙田郷は柔らかい地質を反映して細やかな地形の変化が多く、その結果、水田や河川、集落、森林、道路などが複雑に入り組んだ繊細でヒューマンなスケールの空間が形成されていて、それがこの地域の景観の大きな魅力となっている。
しかしながら、近年進められている道路整備は、こうした景観的特徴への配慮がほとんどなされておらず、繊細な景観の中を2車線の大規模な直線道路が横切り、違和感やインパクトを及ぼしていたり、周囲の地形の脈絡や土地利用の連続性などとは全く関係なく路線設定がなされ、まとまりある景観を分断している例が各所にみられる。
豪雪地帯にあって利便性、安全性を確保し、生活の質を向上させることはもちろん必要なことではあるが、景観的魅力を資源としながら地域活性化を目指すならば、可能な限り景観面への配慮がほしい。大規模な道路の整備に当たっては次のような点をチェックすべきであろう。
・道路の建設(拡幅)が景観的にまとまった集落などの空間を分断しないか。
・道路の線形が周囲の地形と馴染んでいるか(多少でも関連性が感じられるか)。
・2車線の道路がスケール的に大きすぎて地形に馴染まない場合には、場所によっては上下線を分けて設定できないか。
・法面や擁壁など大面積の単調な景観が生まれないか。
・道路空間と周囲の空間とのつなぎ(連続性)が配慮されているか、など。
その他、規模の大きい公共建築物や土木構造物等の計画・設計においても同様の配慮がほしい。
4 「地」の景観(水田・森林景観等)の計画的管理
前項の構造物の景観が「図」の景観であるとすれば、水田や森林などの景観は地域景観の背景や基調となる「地」の景観であるといえよう。農地はもとより雑木林や人工林(植林地)などの景観を含めて人々の管理のもとに生まれ維持されてきた景観は、管理が滞ると荒廃したイメージが増大し、景観的魅力が大きく低下する。