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ここでは条件を揃えるために、COADS-MSTGのデータが存在する緯度経度2度格子のみを解析対象とし、表に示す緯度帯毎に値を平均した。各月の通数については制限せずに解析を行った。また、参考のために使用したデータの標準偏差をあわせて掲載した。海面水温、海上気温ともKoMMeDS-NFを加えた合成データの気候ノイズが小さくなっていることが分かる。一般に気候ノイズが小さいほど小さな気候シグナルでも検知できるため、気候変動の解析には有利である。つまり、COADS-MSTGにKoMMeDS-NFを加えることにより、解析の精度が向上すると言える。

次に、気温について海上と陸上の気候ノイズを比較算定した結果を表2.3に示す。ここでは陸上気温として表2.4に示す1901年以前から観測開始した気象官署のデータを使用し、緯度帯毎に気候ノイズを平均した。また、海上気温としてCOADS-MSTGとKoMMeDS-NFの合成データを用い、月30通以上データが存在する期間・2度格子に限り緯度帯毎に気候ノイズを平均した。

 

表 2.3 月平均海上気温および陸地の地上気温の気候ノイズ(ε)と標準偏差(σ)

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*表2.3中の陸上データとは日本およびその周辺国の気象官署のデータを用いた。用いた気象官署の一覧を表2.4に示す。なお、気象官署のデータはWorld Wether Disk 1994 Edition (WeatherDisk Associates, Inc)のものを使用した。 海上データはCOADS-MSTGとKoMMeDS-NFを用いて作成したデータセットのことである。海上データは緯度経度2度×2度格子の月平均値である。

 

表 2.4 解析に使用した陸上気象観測所一覧

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*気象官署のデータはWorld Wether Disk 1994 Edition (WeatherDisk Associates, Inc)のものを使用した。

 

両者の気候ノイズを比較すると、陸上データによる気候ノイズは0.8〜1.2であるのに対し、海上データでは0.6〜0.9にとどまっている。これは、それぞれのデータの標準偏差を比較すると理解できるように、陸上気温に比較して海上気温は日々あるいは季節の変動が小さいためであると考えられる。

前にも述べたが、気候ノイズが大きい場合には、それより小さな気候シグナルを検出することは困難である。ここで示す結果は、陸上データに比較して海上におけるデータは気候ノイズが小さく、気候変動を解析するには比較的有利であることを示している。

 

 

 

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