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第1セッション「ヨーロッパの温泉と文化と地域づくり」

 

山村教授(コーディネーター)

私は別府の出身で、大学卒業以来約30年間、温泉地のあり方について研究してきた。私も実は、今日おいでのパネラーの方々の所に行ったことがある。ただイスラエルだけは、伺っていない。私なりに外国の温泉地について勉強してきたので、その点も含めてお互いに忌憚のない意見を出し合いたい。

イギリスのバースからお願いするが、最初にスライド等を使い、温泉地の概況の説明が入り、次に共通する問題についてフリートーキングする。最後にフロアの方からご質問なり、ご意見を頂きたい。

 

Paul SIMONS氏(英国)

こんにちは。ではスライドをお願いする。バースというのは2000年の歴史を誇るイギリスの温泉の町である。バースという名前、そのものが「温泉」という意味である。温泉があったから町ができたわけで、別府と非常によく似ている。スパあるいは温泉というのは、この20年間使われていない。いろいろな政治がらみの理由があるので、それには深くは触れられない。しかし現在、過去の遺産を活かして将来を作ろうという動きが出てきた。それには我々の都市の文化遺産を活かさなければならないわけで、私どもの町の人口は8万人ほどだが、訪問する観光客は300万人だ。温泉を将来のビジネスに活かしたいと考えている。

どのようにするのか。レジャー、医療も考えている。しかし、医療の医学っぽいイメージは嫌である。新しいヘルス、健康産業、ウェルネス、健全さ、健康な町、そしてストレスをなくすプロジェクトを紹介していきたい。そのプロジェクトの中の委員会では、どのように工夫しなければいけないのか。そして環境が好転するのを待っているだけでなく、我々が積極的に動かなければならないと思う。これが別府の参考になるのではないかと思う。近代化と伝統をいかに両立するのか。若い人、家族も引きつける、そして訪問者が何回も何回も繰り返し来る、それと同時に新しいビジネスも作りだす。これは非常にマーケティングをうまくしないといけない。だから質の高さが大切だと考えている。

バースは質の高い町であるべきである。付加価値をつけて、訪問者、観光客、そして地元の方々にとっても意味のある町を作らないといけないわけである。地元の方々の支援なくしては、このような都市づくりはできないと考える。

これからいくつかのスライドを簡単に紹介する。どのような町なのか。また新しいプロジェクトの雰囲気をつかみとって頂けたらと思う。新しいスパは2000年末に開始される。これはミレニウム、2000年という新しい1000年回を祝う年でもある。バースはもっとも熱く、湯の量がもっとも多い温泉で有名である。また古代ローマ時代の2000年の歴史を誇る遺跡がある。また18世紀のジョージ王朝時代の遺跡もある。それを持ってユネスコがバースを世界文化遺産に指定した。私どもはイギリスの中でもユニークな存在である。それはバースにもっともモダンな温泉を作るという目的があるからだ。この2年間に完成する予定である。

これは2000年前の古代ローマ時代のバースである。ローマ人、イタリア人に占領されたおかげで、このようなバース、このような温泉地ができたのだから。いわばローマの戦士のための友好の土地、温泉地を作ってくれたわけで、けっして兵営地にはならなかったわけであるから。

 

 

 

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