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2. 基調講演

 

これからの福祉社会と環境に対応した公共交通

 

東京大学大学院工学系研究科教授

太田勝敏

 

皆様、こんにちは。太田でございます。ただいまご紹介がありましたが、私、専門として行っておりますのが、都市交通政策・都市交通計画という分野です。その立場から今日のとくにバスを中心にした公共交通の問題、しかも福祉社会の中でこれから持つバスの役割といったことをもう一度都市交通政策全体の中から考えてみるという形でお話をしたいと考えております。

ちなみに、皆様ご存知とは思いますが、総理府が進めております障害者週間の最後の日ということで、今日が障害者の日となっております。こういった折りにこうしたノンステップバスという福祉社会に向かって新しいイメージを創るような交通システムの全国展開に向けてこうしたセミナーを開催するということは大変意義深いと思っています。

私の話はお手元にメモをお配りしておりますが、最初に背景と言うことでこれからの交通社会と政策課題、とくに都市交通を中心とした政策課題はどうなっているか、その中で公共交通をどう考えるかということから入っていきたいと思います。ただ、そこには必ずしも福祉社会についての姿が出ておりませんが、OHPを使って高齢化社会をどう考えるか、ということをお話しした上でバス交通がどんな形でそれに対応できそうかということをお話ししたいと思います。

また私自身、バスというのは、非常にフレキシビリティの高い、利便性の高い公共交通の一つと考えておりまして、そんな意味で今日話題となっていますノンステップバスをはじめ様々なバスの改善の仕方があるのではないかということをお話ししたいと思います。それから運輸省の調査でのモデル交通計画というのでしょうか、横浜市・金沢市で具体的に新しいバスを中心とした公共交通の仕組みをどう考えていくのかという議論に加わったこともございますが、その当時はまだノンステップバスというのは海外から輸入するしかなかった、ということでわざわざ数少ないバスの一つを横浜市に持ってきていただいて、そこで実際に走らせて実験するということを行ったのがつい2・3年前のことでした。そういうことを考えますと、昨年、日本で国産化され、既に4社がそれぞれノンステップバスを製造し、最近は中型のバスにもノンステップバスが出てきたということでございますし、統計をみましても今年の3月末で全国で145台ほどノンステップバスが導入されているというように、非常に急激に増加しており、大変いい傾向だなと思っております。

こうした中で、私としての考え方ということで、このノンステップバスを使う上で、これまでの横浜市での経験したいことや金沢市での調査をみますと、メリットとともにやはりバス車両だけではなくそれを支える交通システム、道路、停留所施設等が大変重要であるということがわかってまいりました。多少データのあるものに関しては紹介したいと思います。

それからこういった福祉のことを考えますと、福祉の交通というのはかなり広く考える必要があるということで、交通とバリアフリーについて、とくにバリアフリーというのは移動するときだけではなく、家から始まって、移動して、目的地で買い物をしたり、働いたりと、社会的・経済的活動に参加するわけですが、そのときのバリアフリー化ということで幾つかの注目すべき新しい動きがあるのではないかと思いまして、事例として英国におけるバリアフリーの例をOHPで紹介したいと思います。

 

 

 

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