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また、このように誰でも使いやすいデザインを考えていくことが必要な時代になっているのではないかと思います。

たとえば、ピクトグラムというものがありますが、これは文字では表しにくいものを絵で表すサインというようなものです。トイレやタクシー乗り場を表す際に一見してわかるようなデザイン・マークが既に用いられています。しかし、こうしたデザインはそれぞれの会社等で工夫されてやられているようですが、なかなか統一された表示になっていないようです。ISOによりいくつかの統一表示も出されているようですが、量的には少ないようです。空港や駅や公共施設等に行ったとき、案内表示が統一されており、これが国内はもとより国外でも統一されていれば、非常にわかりやすい、使いやすいといえましょう。これがユニバーサルデザインの考え方ではないでしょうか。また、表示の話だけではなく、モビリティ、人が動くときにどのようにすれば良いのかということにこれから取り組んでいくことが必要ではないか考えました。

そこで、行政側としましても、ハードの整備やデザインの統一化ということで様々な方策に力を注いでいきたいと思いますが、もっと重要なことは国民一人一人の他人に対する思いやり・気持ち・やさしさではないでしょうか。たとえば、ドアを開けたら次の人のために少し開けて待っていることやベビーカーを押して電車に乗ろうとしている方に手を差し伸べてあげるようなほんのちょっとのやさしさが、残念ながら先進国といわれます欧米諸国に比べ、まだ日本は遅れているのではないかな、と思います。こうした点に国民一人一人が心がけていくことが重要と考えられます。

先日、クリントン大統領が訪日された際に、TV討論会がありまして、そのなかで障害者の方が、ADA法についてどのようにお考えですか、という質問がなされましたが、大統領からは、これによりアメリカは大きく変わったという答えがありました。この法律は、障害者の方がアメリカ国内における交通機関あるいは公共施設への出入りが全く自由、バリアフリーにできるようエレベーター・エスカレーターの設置、車両面での対応を法律により全てに義務づけたものです。日本はどうしたら良いのかということに皆で議論していかなければなりませんが、アメリカというのは少数の方々が比較的差別をされるという歴史的伝統がある国ということですから、逆に傷害をお持ちの方だけではなく、民族的な点でも少数の人に対する権利を十分に保護しようということで法律によってこのような規定を定めて力を注いできたといえます。ヨーロッパにおきましてはこのような法律はありません。しかしながら、ヨーロッパの人々の気持ち・やさしさは、普段の行動の中で十分に進んでいるような気がします。また、ヨーロッパも国により様々と言えますが、エレベーターやエスカレータをはじめハード面での整備が進んでいるといえます。わが国においてもバリアフリー化・ユニバーサルデザイン化を進め、誰もが使いやすいようにするためにはどうしたらよいのか、ということを私共は考えます。また皆様方も頭の片隅において少しお考えいただければと思います。

こういった気持ちで本日のセミナーをお聞きいただければありがたいと考えております。

簡単ではございますがこれをもって私のご挨拶に代えさせていただきます。ありがとうございました。

 

 

 

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