I. 浜松会場講演録(平成10年11月6日(金)於 浜松フォルテ)
1. 挨拶
交通エコロジー・モビリティ財団理事
寺島清
ただいまご紹介頂きました、交通エコロジー・モビリティ財団の寺島でございます。
開会にあたりまして一言ご挨拶申し上げます。
本日は、全国から多数の皆様のご出席を賜りまして誠にありがとうございます。
冒頭、司会者の方から当財団につき若干の紹介がありましたが、当財団は設立後4年を迎えまして、運輸省と日本財団の支援の元に、高齢者・障害者を含む全ての人にやさしい交通のあり方、並びに運輸部門での地球環境対策などにつき広報啓発、調査研究、施設整備助成などを行っている団体でございます。
当セミナーも、この高齢者・障害者関連の啓発活動の一環として昨年に引き続いて開催するものでございます。
ノンステップバスは、昨年からようやく国産車がお目見えいたしまして、わが国での普及がようやく始まった訳で、当財団でも普及促進のための、このようなセミナーの開催ですとか、充分ではございませんけれど、導入に際しての助成などを行っておるわけでございます。
それでノンステップバスの効用につきましても、このあとの基調講演とか、セミナーの中で詳しく説明されるものと思われますが、このバスは勿論、車椅子の方ですとか、歩行の困難な方に乗りやすくなっておりますが、それ以上に、高齢者の方の乗り降り、特に降りる時大変楽だというふうに言われております。
わが国は、これからどんどん高齢化が進み、2015年には約1/4の人が65歳以上の高齢者になるという、超高齢社会を迎える訳でございます。そのため、将来の乗客を考慮した施設整備が必要ではないかというように思われます。
それからちょっと観点を変えまして、ヨーロッパのある都市で統計を取りましたところ、地域住民の約1/3は、障害者の方を含めまして、一時的な怪我だとか、小さな子供さんと一緒だとか、多くの荷物を持っているとか、そういった何らかの移動制約を持っているというような数字が出ており、こうした数字から見て結構多くの人が現状の高い床のバスに支障を感じているのではないかというように思われます。
それだけではなく、実はこのノンステップバスというのは我々健常者にとりましても、非常に乗り降りが楽で、いわゆるユニバーサルデザインいうことで、これを一般的に歓迎しない方はいないのではないかというふうに思われております。
一方、乗り降りが楽である結果、平均乗り降りの時間が従来のものより短くて済むということで、運行速度の向上とか、人にやさしいだけではなくバス会社にもやさしい経済的に優れた車であります。
ただし、現状では車内の空間利用のやり方とか、不満のある所もございまして、何よりも値段がまだまだ高いというような点が導入の最大のネックになっているんじゃないかと思われます。