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我が国でのMBESの導入は、1983年に海上保安庁水路部の測量船欄に搭載されたのが最初であるが、現在では東大海洋研究所の「白鳳丸」や海洋科学技術センターの「みらい」、水路部の全ての測量船等、十数隻の調査船に搭載されている。しかし、大陸棚海底地質・資源調査に使用されたMBESデータは、当初の目的を達成した後の二次利用(水深図への適用等)は非常に限られているのが現状である。その原因は、1回の調査航海から生じる情報量が非常に多いこと、情報処理が複雑な上に機種や観測船毎に異なった品質水準で確保されていることがあげられる。そのため貴重なMBES原データのほとんどが、個々の調査担当の研究所や研究者のもとに止まっている。このようなデータはその保存のために膨大な記憶容量が必要とされることもあり、放置しておくと二次利用されないまま消失する恐れがある。MIRCでは1998年度の水深データ品質管理ソフトの開発事業として、MBES水深データの品質をチェックし、ファイル化するプログラムの開発を行った。このプログラムはJODCが現在所有しているプログラムをさらに改善したものであるが、観測異常値の除去やデータ欠如部分の内挿作業において、通常の平滑操作では有為な情報を失ってしまう危険がある。したがって、完全な自動化は行わず、随所に専門家の眼を通してのインテリジェンス・チェックを行うように工夫されている所に特徴がある。このソフトのテスト段階においてMIRC独自でもMBESデータのデータベース化を行うが、完成後にはノウハウをJODCに還元して実務に利用してもらうことを考えている。

 

データセット設計表示ソフト開発

1998年度におけるデータセット設計表示ソフト開発事業においても、一般的な表示ソフトの検討を行うのでなく、直接ユーザーに還元できるような具体的な表示ソフトの開発に努めて来た。従来、データ提供は数値化されたデータベースの形で提供されることが多かったが、情報量の増大、ユーザーの要求の多様化から、画像あるいはイメージ情報が求められる事例が増加している。

表示ソフトの1つは、東京都・千葉県・神奈川県・静岡県の水産試験場(名称は各県位により異なる)が共同して毎日(日祝休日を除く)発行している一都三県漁海況速報を例にとり、日祝日部分を補完しながら各暦年毎に纏めてCD-ROMに収録するプログラムを開発した。このプログラムは神奈川県水産総合研究所と千葉県水産試験場富津分場が共同して発行している東京湾口海況図にも適用し一般性を確かめている。このプログラムはMIRCのサービス部門が独自で発行している海洋速報や海流推測図にも応用することを予定している。

もう一つ開発したソフトは、JODCが収集を始めたNOAA/AVHRRの表面水温情報の画像表示に関するものである。衛星画像は速報性を持つ有用なものであるが、個々の画像は雲の存在のために水温情報は限られた画像部分だけに限られる。しかし、半月程度の期間に集積された全ての画像データから、それぞれの地点での最高水温値を選び出して画像を再構成するとかなりきれいな表面水温分布を得ることが知られている。もちろん、半月程度の期間ではその期間中ずっと雲で覆われた部分が残る。我々は実用的な立場にたって、若干の欠落部(雲の存在のために現れる低温音)をそのままにして画像化するプログラムを先ず開発した。雲部分を検出し、その部分の水温値を内挿してきれいな画像を作成するには、人の眼を通した若干の主観解析を必要とするが、多くのユーザーから等温線を表示した画像に対する要望が予想されるので、欠落部に合理な水温値を内挿し、さらに等温線を描くプログラムも開発した。このようなプロダクトを作成する目的は、月2回の割合で発行されている海洋速報とペアの形でユーザーに提供しようとするもので、最終的にはこれも各年毎にCD-ROM化して一般に配布出来るようにしたいと考えている。

 

 

 

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