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先ず、日本周辺の海域に、図6.1の様に長方形の断層場所を数多く設定する。夫々の位置で、規模の異なる地震をいくつか与え、それによる津波を計算する。こうした計算結果を、震央、地震の規模、断層の深度をパラメータとして、貯め込んだデータベースを作成しておく。もし、地震が発生すると、その位置・規模が決められるが、計算条件と実際とは完全には一致しないから、実際条件に近いものを選び出し、内挿によって津波高を決定する。

津波高の発表は、従来より詳しくなる。

まず、津波予報区の数は従来の18から66に増える。原則的には各県当たりの予報になると考えて良い。しかし、場所によってはその海岸の特徴を生かすように区分される。これが特徴的に表れる例として青森県があげられる。この県の沿岸は、日本海沿岸、陸奥湾、太平洋沿岸の三つの予報区に区分されている。

次に、夫々の区の予報津波高が、[0.5m]、[1m]、[2m]、[3m]、[4m]、[6m]、[8m]、[10m以上]と詳しくなる。ただ、これは各区沿岸での平均値と見なされる値であり、その区内の、どこか特定の湾での値にするためには、こうした予報値とつなぐ必要が出てくる。同じ湾内でも、入り口に近いところと湾奥では津波高は異なるのが普通である。津波警戒に当たる市町村では、気象庁発表の津波高が当該市町村の沿岸でどの位のものになるかを知らねばならない。現在、気象庁発表の津波高を各市町村沿岸での値に翻訳し直す仕事が、国土庁を中心に進行中である。本調査研究の成果も、こうした翻訳がなされて初めて実用になると云えるのではなかろうか。

更に、量的津波予報では、津波到達時刻も発表される。船舶の避難に大いに役立つ情報である。本研究では、津波到達時刻として、海面変動が10cm、或いは20cm程度になる時刻であると定義した。量的予報ではどうなっているかを調べ、この点の調整を図る必要がある。

また、量的津波予報では、津波高20cm以下なら、津波注意報も出さない。この程度の副振動のある港湾が多いから、特別な警戒は必要でなかろうとの観点から決まったことである。ただし、海水浴客など海中に居る人には危険が及ぶ可能性が無いわけではないから、津波注意報は出さないまでも、何らかの警告はする予定である。同じ事が、港湾工事特に潜水工事に従事する人に適用されなくてはなるまい。

このように、本研究の成果が、気象庁の量的津波予報と結合されて運用されることが望ましいと考える。

 

 

 

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