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ウ 予算編成と執行の「普遍性」の原則

 

連邦レベルから地方自治体にいたるまで、行政府が予算案を編成し、代議機関が審議・可決し、行政長の署名によって予算法が施行され、行政府が予算の執行に責任を負い、代議機関が執行に関する監督権を持つ等の原則が貫かれる。

 

エ 予算外基金の設置の可能性

 

連邦レベルで設置される「予算外基金」のほかに、構成主体や地方自治体には、目的を特定して予算外基金を設置することが認められている。災害時の緊急支出、特定産業の支援など多種多様な予算外基金が構成主体や地方自治体の予算に設置されているが、基金形成のための特定な財源によって裏打ちされていない事例が多い。そのなかで注目されるのは、サハリン州の「外貨基金」である。サハリン大陸棚石油・天然ガス開発プロジェクトに伴い、開発権を取得した企業が支払う一時金(ボーナス)等を財源とし、支出目的を特定している「外貨基金」は、後に見るとおり、一般会計予算の規模と比較しても、重要な役割を果たしている。

 

(3) 構成主体の下部に位置づけられる地方自治体の権限に関する連邦法

 

連邦法第4807-1号(1993年4月)には、連邦構成主体のみならず、地方自治体の予算に関する基本的な原則も盛り込まれている。しかし、地方自治体の権能を包括的に規定したロシア連邦法「ロシア連邦における地方自治体の一般的原則について」が施行されたのは1995年8月である。詳細には触れないが、後者の法律が市民自治のもっとも基本的な単位として地方自治体を規定し、それに相応する大きな権限を自治体に認めている一方で、自治体を連邦構成主体の「下部組織」と位置づけた連邦法第4807-1号が、連邦・構成主体・自治体の財政関係を規定する根拠法として維持されていることから、矛盾も生じている。一例を挙げれば、軍事施設や軍産複合体に強く依存してきた「城下町」というべき地方自治体に対しては、連邦予算から特別な支出が求められる事例が少なくないが、連邦法第4807-1号の規定により、連邦予算からの支出が構成主体の予算を経由するため、必ずしも政策意図通りの支出が行われないことも指摘されている。

 

 

 

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