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(4) 税制度に関する基本法および個別の税種について定めた法律を含む連邦税法

 

今日まで、ソ連邦崩壊直後の1991年12月に施行された「ロシア連邦における租税制度の基礎について」がロシアにおける「税制基本法」となっている。この法律は、国家財政の基礎が租税収入にはなかったソ連期の財政原則を急速に転換するために成立したもので、何度にもわたって抜本改正が試みられてきたが、議会の同意が得られていない。税制基本法には「ロシア連邦領土内で徴税される租税の種類」に関する規定(第2節)が含まれているが、個々の税種については1991年12月の「付加価値税法」以降、個別の税法が設けられている。なお、税制基本法の規定と個別税法の規定が矛盾している場合も少なくない。一例を挙げれば、税制基本法では、各種の税種を「連邦税」「構成主体税」「地方自治体税」に分け、それぞれの予算の財源とすると規定されているが、毎年の連邦予算法では、連邦税であるはずの付加日価値税も連邦予算と構成主体予算に配分すると定められている。

 

(5) 毎年度の予算を定める各レベル(連邦、構成主体、地方自治体)での予算法

 

すでに述べたとおり、各級の予算はすべて行政府の編成した予算案が代議機関によって審議・可決されることによって執行される。また、原則としては、各級の国家権力(ロシア連邦では、ソ連期と同様、構成主体や地方自治体も「国家権力」をそれぞれのレベルで代表する「権力機構」であると規定されている)は、独立して予算法を制定し、執行することができることになっている。しかし、構成主体予算であれば、連邦予算中の「地方財政支援基金」の総額と、各構成主体への配分比が確定しなければ、実際には予算案を編成し、執行することはできない。同じ事情は構成主体予算と自治体予算についても該当する。また、これも上述したが、税制基本法の規定とは異なり、いくつかの税種については、その税収の各級予算への配分比が、各年の連邦予算法で定められる。これも各級予算の「独立」原則と抵触する。

 

(6) まとめ

 

以上、ロシア連邦における地方財政制度を根拠づける法的基盤について、その概要を述べてきたが、問題点として以下の3点を指摘すべきであろう。

1]形式的には、地方財政制度を根拠づけるに足る法律などが整備されているが、その規定と実際の運用(各年予算法など)との間には大きな齟齬が存在する。

2]各級(連邦・構成主体・地方自治体)の財政の独立性が原則としてうたわれているが、連邦予算法が可決・成立しなければ、「下級」の予算案が編成できないなど、「下級」の予算の連邦予算に対する依存度が高い。

 

 

 

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