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3 植物によるCO2吸収固定のメカニズム

 

(イ) ルビスコという酵素の働き

 

植物がCO2を吸収固定する経路で働くルビスコは、CO2固定反応を行うとともに、O2とも反応する。高等植物のルビスコは、CO2と反応する方が、O2と反応するより100倍反応しやすい。ルビスコがO2と反応する役割と光呼吸の役割は、強光下で光合成装置を守る仕組みである。

CO2が不足すると、ルビスコはO2と反応して自動的にCO2を補う。葉緑体内のCO2濃度が下がると、光合成回路は回らなくなり、光エネルギーは活性酸素の生成に使われ、光合成装置は破壊され、葉は渇変する。葉緑体内のCO2濃度を下げない仕組みが働くことは、植物にとり死活に関わる重要な機能である。

 

(2) 植物の呼吸によるCO2の放出

 

光呼吸ではせっかく固定したCO2を葉の外に出してしまう、というのは正確な表現ではない。活発に光合成をしている葉緑体内のCO2濃度は、周囲の2分の1になっており、CO2濃度の高い外部に逃げることはない。光呼吸経路で発生したCO2が葉の外に出るのは、強光照射時に急に葉を暗くするか、葉の周りの空気のCO2濃度をCO2補償点(約40ppm)以下に下げるなどの人工的な処理をしたときだけである。

 

(3) 光合成能力の高い植物

 

CO2固定反応系に加えて、CO2濃縮反応系を備えている植物を、この反応途中の生成物であるC4カルボン酸にちなんで、C4植物という。C4植物では、維管束鞘細胞に運ばれたCO2濃度は相当に高いので、ルビスコは酸素と反応することはほとんど起こらない。大気中のCO2濃度が低い条件でも、C4植物は高い光合成を示す。

しかしC4植物は、より多くのエネルギーを必要とし、水分の減少に敏感に反応して気孔を閉じ易い。したがってC4植物が優勢になるのは熱帯の乾燥した土地であり、一定の雨量のある地域ではC3植物の方が多い。

植物は光エネルギーを化学エネルギーに効率よく変換するが、その一部しかCO2固定に使っていない。したがってCO2固定に関しては改良の余地はある。

 

 

 

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