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(c)試験結果

退船試験全体では、各退船作業は概ね計画通り行われ、特に退船設備の不備も見られなかった。また、本試験において、総員退船時間は2時間弱(乗客集合及び退船準備に約30分、乗客降下時間約90分)であったが、これは試験の安全の確保上、降下の間隔を広くとったため(約3人/分)であり、実際には60分以内の総員退船を確保できると考えられる。このことから、基本的に現在の内航旅客船の退船システムは有効に機能することが確認された。一方、以下のような問題点も指摘された。

イ 非常配置表の人員配置の適正化

退船作業において、同時に複数の部署に配置されている場合があり、退船作業のフローに沿った適正な人員配置を行う必要がある。

ロ 総員退船に対する十分な訓練の必要性

迅速な退船のためにはシューターの展張やいかだの連結作業などが円滑に行われることが不可欠であり、そのための十分な訓練が必要である。しかしながら、そのような訓練を船上で行うことは困難であり、船員がこれらについて訓練を行えるような環境が必要である。

ハ 旅客の退船時における混乱への対応

アンケート結果から、旅客の約5%が船室に戻れなかったこと及び約4%が脱出時に脱出グループからはぐれたことが判った。これに対し、脱出経路図等の表示をより理解しやすいものとすること及び予備の救命胴衣などの設置を検討する必要がある。

2)救命設備の有効性の検討

イ 救命設備の仕様

個々の救命設備の仕様・性能要件について、国際基準と異なるものを設定することは、国際的整合性の観点からも好ましいものではなく、また、使用の際に使用者に無用の混乱を生ずるおそれもあるため、内航船の航行実態からして必要不可欠なもの、また、国際基準に適合させることが著しく不合理であるものを除き、基本的に国際条約で定められた要件に整合させることが望ましい。

 

 

 

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