これに対し、運輸省においては、平成7年7月、近海区域を航行区域とする貨物船のうち、航行水域が主要内航航路を包含する区域(最大距岸距離100海里程度)に限定されているものについて、「限定近海船」として新しいカテゴリーを設け、防火構造、消防設備等について要件の緩和を図っている。もっとも、救命設備については、これまでも外航船に比して緩和されているため、いかだの艤装品などの緩和であり、設置数量については特に大きな緩和はない。
旅客船についても、近年、本邦主要航路間を直航する大型長距離カーフェリーが増加しており、要件の緩和を求める要望がなされているが、事故が発生した場合の社会的影響が大きく、検討に時間を要することから、現在のところ限定近海船の対象から除いている。
(2)内航旅客船の運航管理等
内航旅客船では海上運送法に基づき、運航事業者が輸送の安全を確保するために遵守すべき事項を定めた運航管理規程を旅客船毎に作成し、運航業務の責任体制と業務実施の基準を明確にしている。
同規程では、発航中止及び航路変更に係る気象・海象条件、船舶の動静確認等の運航基準や、運航管理の組織、作業基準及び事故処理基準等が定められている。
また、船員法に基づき、事故等の非常事態に備え、非常事態において船員が行うべき作業や配置を定めた非常配置表を備え付け、船員や旅客に対して操練等を実施している。
(3)日本の海難救助体制
海上保安庁では、日本各地に通信所や方位測定局等遭難信号の聴取体制を整えているほか、GMDSSの導入に伴い、COSPAS/SARSATシステムの地上施設の運用を行っている。
また、海難救助体制として、巡視船艇、ヘリコプター等により、陸岸から200海里以内では12時間、100海里以内では6時間の即応体制の確立を図っている。
4.救命設備の有効性の検討
(1)退船システムの有効性の検討
現在、船舶の退船システムに係る技術基準については、事故発生後に船体を放棄する場合の人命確保のための設備として、船舶からの脱出設備や陸上、付近船舶から救助されるまでの間生存する設備について、船舶の種類・大きき、航行区域、気象・海象及び陸岸からの距離を考慮して積付け数量及び性能を定めている。