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3.4 「研究開発資源の再構築」

3.4.1 まえがき

我が国造船業の研究開発費と研究開発担当者数は減少が著しく、また、研究開発費の生産高に対する比率も低下している。知識集約産業として21世紀に発展するために、研究開発資源を再構築する必要がある。設計・建造の「枠組」を規定するCIMと、設計・建造される製品としての船舶・海洋構造物の品質・性能等の「内容」を規定する研究開発資源の拡充・高度化が相俟って高性能高品位船を生産する知識集約型造船業の基盤となる。

 

3.4.2 基本認識

(1)研究開発資源

研究開発資源とは、技術開発、製品開発に寄与する研究者、技能者、実験施設、研究開発用コンピュータ環境、研究開発費、及び、それらの運用体制である。ここでの検討対象は造船技術とする。

 

(2)造船技術及び技術開発の分類

造船技術は、設計、建造、保守等と製造過程による分類ができる。また、人工物・製品としての船をまとめるための汎用技術、システム技術と造船・船舶分野に特有の基礎技術、例えば、造波現象と船舶性能を関係付ける理論の応用技術、とに分けることもできる。

研究開発も全く新しいコンセプトや製品を開発する本格的なものから、日常的な創意工夫のレベルまである。企業戦略としての研究開発の目的は、(イ)顧客ニーズ、すなわち物流革新への対応、(ロ)在来船の受注競争力強化(性能分野・構造分野での改良、高付加価値化等)、及び(ハ)企業内での生産性の向上(設計システム、製造設備の開発・改良等)である。S&O財団の調査報告では、技術開発の目標を新コンセプト創出及び標準化・パッケージ化とし、それぞれを「創造発展型技術開発」と「継続発展型技術開発」とに分類している。建造関係の技術とシステムはCIMに集約され、その実現の過程で関係技術と研究開発は再構築されよう。また、LCAが定着すれば、保守技術も設計・建造の過程で加味・反映される。

 

(3)再構築とアウトソーシング

再構築では、研究資源のあり方とそれに至る過程が重要である。また、研究開発の枠組と資源の具体的な内容とともに、永続的に機能を維持発展できる体制であることも要件となる。技術の進化は日進月歩であり空白は許されないから、再構築の過程における機能の維持も重要である。また、企業、あるいは、業界全体としても、全ての資源を自己完結的に保持する必要はないが、現状の資源の分布、及び、今後の研究開発の方向性と内容により自ずとアウトソーシングの程度は決まるが、各機能要件・要素の保持についての、メリットとコストの評価と各企業の活動範囲に関する経営判断も、再構築の際の重要なポイントとなる。

 

 

 

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