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3.4.3 造船分野における研究開発資源の現状

造船大手7社の船舶関係生産高は昭和57年度の13,000億円に対し、最近は8,000〜10,000億円であり、船舶関係の研究費と研究者数は約110億円(生産高比1.2%)、366人となっていて、昭和60年度まで 170億円、及び、1,000人台で推移していたのに比べ著しく減少している。また、現在の人的資源は船型・流体部門に偏在する(運輸省海技局の技術開発動向調査)。 物流革新となる研究開発としては、コンテナ船、VLCC、LNG船等、種々の実績があり造船業界の大きな発展に貢献してきた。その時代のニーズを反映した大型の共同の研究開発として、超近代化船、TSL等の新コンセプト船、メガフロート等の開発プロジェクトにより多くの技術課題が解決された。しかし、経済性の壁で需要にはなかなか結びつかないという厳しい現実もある。

在来船の研究開発は、受注競争のため各社の模型試験水槽等研究設備、評価ツールの充実により効率的に推進される体制になっているが、研究開発担当者数の減少から明らかなように全体的に余裕と余力を失い造船の基礎的研究開発能力は後退している。企業内での生産性向上のための研究開発は各社生産能力の向上、工期短縮など着実に成果を挙げている。また、情報化時代のテーマとして造船CIM、CALS等が共同で取り組まれ、造船業の体質を変える柱になると期待される。

 

3.4.4 取り組むべき課題及び解決法

(1)研究開発の戦略と体制の確立

再構築に必要なものは、明確な目的意識、方針及び具体化の青写真である。急激な改革を避けるなら、段階的に実行可能な方策と手法を模索する必要がある。また、経営戦略から再構築の実施に至るまで、意識と意志の統一も大切である。

社会ニーズに立脚した高品位高付加価値船に開発を指向すべきであり、図-1に見られるように、物流、海上輸送のニーズを調査し、方針と開発すべき船の仕様を明確にして技術開発を進める。造船所各社は、得意業を中心に特色を持ち、ライセンスの相互利用によりそれぞれが競争力のある商品で棲み分けをする新しい競争と協調関係を確立する。このような企業戦略の転換により研究開発資源を効果的に活用して、高水準の船型開発ができる体制を整備する。また、同型船建造の方式をさらに進めて受注生産や船型開発の方式も航空機と類似の方式に近づける(5項参照)。

 

(2)研究開発手法とツールの高度化

船体構造方式、材料・溶接法の研究、及び、水槽試験やCFD(数値流体力学)の性能解析手法の高度化を行い、データベースを前提にした開発技術と総合的な性能評価法を確立する。また、そのような手法を使いこなせる技術者チームの育成が急務である。中長期的にはADDAの発展型としてSBD(シミュレーション援用型設計)手法を視野に入れた造船設計技術の一層の合理化・先進化が目標となり、CFDを活用した船型設計法の発展や「数値水槽」の活用、あるいは、そのための基本的な検討と基礎データの整備を行う必要がある。

 

 

 

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