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3.3 「Simulation Basd Design(SBD)」

3.3.1 まえがき

SBDとは製品を製造する前に仮想の製品を試作し、様々な角度から仮想製品に検討を加え、すなわちシミュレーションを行って出来上がりの予想を立て、設計品質、コスト、製造工程等の改善に貢献することを目的とする設計手法である。製品そのものに加え、製品を製造するための設備や製品の使用環境をもモデルに取り込み、製品の使用中の機能予測を行うこともSBDに含まれる。

造船システムにおけるSBDは船舶の建造、運航、保守を通じて実際に起こり得る様々な事象を想定し、要求仕様と照らしながら船舶の性能、船体構造と生産性、搭載機器の性能と配置および保守性等を数値的、視覚的にとらえて予測、評価するツールと位置づけられる。経験に基づく設計から予測に基づく設計への変革のなかで、SBDは船舶の設計段階のみならず、船舶のライフサイクルにおよぶ品質とコストの改善に寄与することが期待される。

SBDのあり方は個々の製品のデザイン・コンセプトを基本に置かなければならない。タンカー、コンテナ船、液化ガス輸送船等の各種専用船や海洋構造物を製造するとき、個々の製品の使用条件、生産技術、製造資源等を視野にいれて、その目的、機能を最も効果的に達成させるためのデザイン・コンセプトを構築する技術や手法を確立することも重要である。

 

3.3.2 基本認識

(1)情報技術の発展とシミュレーション

通信、制御、コンピュータに関連した情報技術は生活様式、社会構造や技術体系に大きな変革をもたらし加速的に発展している。特にコンピュータ技術は、半導体技術の高度化により、スーパーコンピュータから、ワークステーション、パソコンに至るまで高度な発展を続けている。ソフトウェア技術の進化は、分散処理やグラフィック処理、モデリング、知識処理、データベース技術、ネットワーク技術からユーザー環境まで大きく変えて、高速で大量の情報処理を可能とした。また、画像表示機能を持つリアルタイムシミュレーションも可能になり、聴覚や視覚まで加味した Virtual Realityが様々な分野のシステムの設計・評価に活用され始めている。

 

(2)船舶の合理的設計

造船の短納期化に伴い設計・建造の迅速化が求められているが、船舶の品質の維持・向上を図り、より合理的な設計を目指そうとしている。蓄積された経験、ノウハウ、新しい解析技術を有機的に統合した設計技術の向上が求められている。
また、船舶建造や運航に係わるコストにおいて、現状は主に建造費、燃費、人件費に関心が払われているが、船舶のライフサイクルにわたるコストを最小とすることを指向すると造船所、船会社、船級協会、保険会社、舶用工業などが情報を共有しながら全体的な cost efficiencyの最適化に取り組む仕組みが必要となり、オブジェクト指向へと設計のあり方も変革してゆく。

 

 

 

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