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3.2.2 技術課題

船舶を如何に使い易い道具にするか、ヒューマンエラーを如何に排除するか、1項で述べたSR238の試みもアプローチの方法の一つであると思われるが、その他にも下記に述べる検討方法が考えられる。これら研究の結果、新しいアイディア、装置が考え出されたとしても、それに要するコストに比べ、相応な安全性向上メリットが得られる場合にのみ、現実の船に採用されることになるのは当然である。

 

(1)デザイン思想の見直し

(a)マン・マシンインターフェイスの見直し(環境改善型/設計変更型)

現在の乗組員は多様な船に配乗されていると同時に、実に多種多様な機械・機種の操作に習熟することを強要されている。同じ目的に使用される機械であっても、機種によって極端に操作方法が異なっていないか、またその操作性が人間の生理に合っているか等の見直しが望まれる。これらの検討は個々の生産者の枠を越えた操作性の標準化にも話が及ぶ問題である。自動車、家庭電化製品等の大衆向け工業製品はこの視点での検討の先駆者的製品であると言えよう。乗組員の経験年数が短くなる傾向のもと、ぜひとも取り組みたい研究課題である。

(b)デザイン思想の見直し(設計変更型)

舶用品と陸上用工業製品の大きな違いの一つは、その物理的リモート性から、日常点検及び頻度の高い整備を陸上専門技術者に依存することが出来ない。つまり船上乗組員の手に委ねざるを得ない点であろう。従って、船上乗組員に依存しなければならない部分はブラックボックスではないことが望ましいが、たとえブラックボックスの場合でも、船上乗組員が操作、整備する際、迅速、かつ適切な対応が取れるものでなければならない。同目的に使用される機器であるが生産者によって著しく設計思想が異なり、極端な話、非常時、故障時の対応・操作がまったく異なる等の機器・システムは船上乗組員にとって、きわめて厄介で、危険なものとなろう。特に船が危険に瀕し、かつ説明書等をじっくり読む余裕がない事態で要求される対応・操作は最低限標準化されるべきであろう。ヒューマンエラーを減らすためには、この観点からの見直しが是非必要となる。

また、舶用品によっては、数百年来基本原理が変わっておらず、船舶が大きくなっても、それをそのまま相似形に大きくしただけの物もあり、それらが人間にとって果たして使い易い道具となっているかの見直しも必要と考える。舶用品のみならず、船そのものについても同様なことがいえよう。例えば、船体が応力的に厳しい状態になっていたとしても、それが操船者に感じられない状態は人間と道具の接点に問題があると捉えて良いと考える。

 

 

 

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