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gyrAやBのような、抗生を持つ遺伝子の部位を見つける研究も現在進められている。フルオロキノリン(fluoroquinolones)に対して耐性を持つ部位が突き止められれば、ハンセン病治療の期間を短縮するためにこれを使用できるかもしれない。

 

T細胞抗原とスキンテストの反応T細胞の研究が進み、M.lepraeに対するT細胞の反応を、大規模な実地研究で測定できるようになった。これには、抗原に対するT細胞の増殖や、サイトカイン(リンパ球その他の細胞から分泌される活性液性因子)の分泌を測定するために、単純な、全血の培養・分析が欠かせない。こうした分析は現在ネパールで、新しいスキンテストの反応の抗原性を調べるために行われている。また、アフリカのマラウイでは、700人のボランティアに対して、BCGワクチンによってT細胞の免疫性がどのように変化したかを調べるためにも行われている。このようなテストは、家庭内で接触した人々のT細胞の反応や、抗体の反応との関係を調べるために使えるはずである。

 

ツベルクリンに似た新しいスキンテスト用試薬で、病状発症以前のハンセン病の感染の有無を調べることができる。また、社会への感染を防ぐ介入措置を監視したり、ハンセン病制圧の取り組みを強化することもできる。手始めとして、2種類のM.leprae専門のスキンテスト試薬を開発中である。細胞壁とサイトソル(細胞質の液性媒質)抗原片がまず作られた。これらの小片から炭水化物と脂質を取り除いて、1998年後半にテストの第1段階に入った。第2,第3の段階の実験はネパールで行う予定である。WHOが着手しているもう一つの方法は複数の研究機関がかかわっている研究で、合成ペプチドを分離して、M.1eprae専門のペプチド・エピトープ(抗原決定基)を突き止めようとするものである。予備段階のテストでいくつかの有望な因子がみつかっている。これらの試薬を実験計画に盛り込むに先だって、限界を明らかにするテストを満たしておかなければならない。ゲノム・プロジェクトの完成によって、M.1eprae専用のプロテインが作られ、新たなスキンテストの試薬として利用できると思われる。

 

らい菌(M.leprae)が鼻を通して伝染する場合

ハンセン病が存在する社会で、鼻を通してM.1epraeがどの程度伝染するかを明らかにすることにも、大きな関心が寄せられている。この目的のために、M.lepraeのDNAのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)と、M.1eprae特有の抗原をモノクロナル抗体による染色方法が使われ、成功してきた。最初の結果は、MBやPBのインデックスとなる患者に接触する家族は、3〜9%の割合で陽性であることがわかった。鼻が一時的に細菌に汚染されたり、常に細菌を運ぶ手段(あるいは住み着く場所?)になっていることと、鼻の粘膜に病変が起こることの関係を知るために、新たに大規模な調査が必要になるだろう。こうした研究の成果が、社会にM.1epraeの保有者がどれだけいるか、また、M.1epraeがどのように伝染するかを知る重要な鍵になると思われる。このような分析調査の信頼性を高める研究が行われなければならない。たとえば、大規模な集団検査で感染していない人々を選別し、このような非常に微妙な分析調査を使って、擬陽性の率が実際にはどれほどあるかを割り出す必要があるだろう。

参加者:T・ギリス(議長)、P・ブレナン(報告者)、サング・ナェ・チョウ、マリア・ダグラサ・S・クンハ、ジム・ダグラス、ステラ・ヴァン・ビアーズ、フランソワー・ポーテールズ、ヘイゼル・ドツクレル、トランクイリーノ・ファハルド、ウトパル・センダプタ

 

 

 

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