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化学療法

 

議長:J.グロセット教授

 

ワークショップの参加者は次の点で意見の一致を見た。

 

世界的に見てハンセン病の有病率が劇的に減少したために、治療を行うシステムも新しく現実に適合させなければならず、今後はどこでもリファンピシンの服用状態を月ごとに管理するわけにはいかないだろう。しかし、現在行われているハンセン病の薬品投与(WHOが勧告するMDT)の効果は絶大なので、各国のハンセン病対策プログラムには引き続きこれらの薬剤の投与を採用するべきである。この投与方法は効果が大きく、ブリスターパック入りの薬剤を規則正しく服用するので、毎月一般保健サービス機関が直接監督しなくてもよいという利点がある。

 

MDTハンセン病患者に対してWHOが定めている2年間のMDT投与の効果や、PBとMBの定義の変化、MDT患者の大半にBIの割合が低いことなどを考慮すると、MB患者に対する治療期間を12ヶ月に短縮してもよいと思われる。同様に、病変が単一のハンセン病患者に対してリファンピシン―オフロクサシン―ミノサイクリン(ROM)だけを服用させる方法は、各国のプログラムにとっても実施しやすいものである。現在のWHO勧告は最低のガイドラインを示すものであることを、理解していなければならない。

 

単一の病変に対するROM治療を除いて、現在のところ新薬の使用は、たとえばリファンピシンヘの耐性が明らかになった場合のように、特別なケースに厳密に限られるべきである。新薬の開発と投与方法の研究は、いまも奨励されており、化学療法の中でももっとも優先的に考えなければならない領域である。

 

薬剤が適切な組み合わせで使われている限り、薬物に対する耐性は現在問題にはなっておらず、将来MB患者に対する治療期間を12ヶ月に短縮したとしても、耐性が増すとは思われない。マウスの足の肉趾に菌を植え付ける実験に代えて、薬剤の耐性を調べるためには分子生物学的な方法を使うべきであろう。

 

最後に、ハンセン病制圧プログラムの存続には、西暦2000年以降も薬剤の供給が確保さ.れることが不可欠である。

 

参加者:ジャック・グロセット(議長)、スコット・フランズブラウ(報告者)、ロバート・ヘイスティングズ、ポール・ロウシュ、D・V・A・オップロモーラ、バオホン・ジ、ルウ・レヴィ、ダイアナ・ウイリアムズ

 

 

 

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