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ハンセン病とその制圧に関するワークショップのまとめ

 

モデレーター:W.C.S.スミス博士

 

この会議では、ハンセン病とその制圧をテーマとする4つのワークショップが行われた。それぞれのワークショップでは、「病気の定義と抗菌療法」、「患者の早期発見」、「感染率の低い地域でのハンセン病制圧事業継続」、「障害の予防」の4つの問題を取り上げた。早期発見から病気の定義、後遺障害の予防まで、病気とその影響について広範囲にわたるもので、いずれも世界的に行われているハンセン病制圧プログラムが現在直面している重要な課題である。このように広い範囲にわたる課題を扱いながら、これらのワークショップでは、興味深いことにいくつかの共通のテーマが明らかになった。それらは、次の5つにしぼることができる。

 

1. どのワークショップも、それぞれの議題に対して幅広い総合的なアプローチをとっている。ハンセン病の定義にしても、これまでは化学療法の面からのみ、狭くとらえてきた。このたびのワークショップでは、抗菌を目的とした化学療法の必要性ばかりでなく、病気の経過やその影響までを視野に入れて総合的にとらえようとしている。感染率の低い地域の問題でも同様に、その地域の問題に限定せず、包括的なアプローチをとっている。障害の予防に関しても、総合的なアプローチという同じテーマを貫いている。すなわち、病気の経過にともなって起こる影響や障害を予防するために、多くの専門分野が協力してとりくむことを重視している。

 

2. 二つ目の大きなテーマは、患者やハンセン病の影響を受けた人々への配慮である。プログラムを実施する側が、彼らをプログラムにどう組み入れるかと考えるのは、もはや不十分である。制圧プログラムは、その恩恵に浴するはずの人々にとって満足なものでなければならない。この考え方は、病気の定義にも影響してくる。病理学の面からばかりではなく、患者にとって何が問題なのかということも含めて定義しなければならない。同じように障害の予防についても、神経機能の損傷によるインペアメント(機能障害)の程度を測るばかりではなく、病気の影響を受けた個人個人にもっとも重要な能力や機能を考慮した予防方法がとられなければならない。

 

3. 第3のテーマも、どのワークショップにも関係するもので、今日のハンセン病問題ととりくむためには、パートナーシップを築く必要があるという点である。それぞれのワークショップは、地域の患者グループや、ボランティア・グループ、プライマリ・ヘルスケア・サービスなどを含むいろいろなグループなどの中から、どのグループと協力関係を築いたらよいかを検討した。これらのグループは、患者の早期発見から障害の予防、感染率の低い地域での制圧プログラムの継続問題などに、それぞれの役割を演じるはずである。

 

4. 第4の重要なテーマは、短期的な目標を達成するだけではなく、ハンセン病の影響を受けた人々が長期的に恩恵を受けるプログラムをいかに継続するか、である。

 

 

 

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