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慶応大学文学部哲学科卒業、高校教師の時代に中途の完全失聴されて退職されました。その後、1995年に人工内耳を装用されて、20年ぶりに聴覚をとりもどされました。今は今日の演題にも沢山話が出ますが、補聴援助システムを有効に活用されている方です。この体験もふまえて、補聴援助の必要性を全国に訴える活動をされている方です。人工内耳も補聴器も、どちらも稀聴援助システムの一つとして考えるべき補聴システムですから、画期的なこれからの運動の方針などもお聞かせ願えるよう期待しております。

最後にお話いただきますのは、藤田保先生です。藤田先生は、京都府立医大卒業、付属病院精神科勤務、その後、1977年神経腫瘍で手術された後に聴力を失われました。1978年、琵琶湖病院で医師として活躍。大津市の手話サークルで手話の学習、滋賀県の中途失聴協会副会長、京都市の聴言センターでは精神衛生相談。日本のパイオニアです。今は、琵琶湖病院で聴覚障害外来、滋賀県聴覚障害者協会理事をされています。藤田先生には、聴覚障害者のメンタルケアについて、有意義なお話いただきます。

以上、今日の4人のスピーカーの方の簡単なご紹介を行いました。

今日のテーマを4人の先生にどのようにお話いただくかですが、聴力を補いあう場合に、大雑把に言って3つの方向性があります。3つの方向のどれもが欠かせません。

勿論、今回のシンポジウムで、たくさん話された補聴器そのもの、今日でいえば補聴援助システムそのものもですが、補聴器のハードな面がどうなっているか、フィッティングはどうかも重要ですが、社会的にも啓発されています。もう一つ重要な、補聴援助システムがなんででてきたのかというと、ノイズ、うるさいところでどうしても聞き取りにくいと、ノイズをおさえ、聞きたい言葉の方を浮き上がらせるにはどうしたらいいか、ここの補聴援助システムの大事さがあります。

補聴器そのものを良くする、周りの環境を良くする。まわりの環境をよくすることは、良く言われています。

補聴援助システムのハードはどうなっているか、立入先生にわかりやすく解説していただきます。それから、遠藤さんと小島さんについては、音の環境、聞き取る為の良い環境はどうしたら良いか、ということに触れてお話があると思います。

藤田先生には、補聴器を使う人が、コミュニケーション意欲、人と交わる意欲がないとこの二つがいくら良いものが用意されても何の意味もない。堂々と補聴援助システムを使う、難聴者であることに対する支援を堂々と受ける、その意味をちゃんと伝えられる我々自身の方の、メンタルな問題についても深く考えたい、そんな位置付けでお話いただけると思います。

ところで、今この場所で私の声が他より大きくなっているかというと、回りの騒音が60だとすると、私の声が75で入るとする。75引く60イコール15、その15をSN比と言います。どれだけ周りの音より浮き上がっているかをSN比といいますが、そのSN比が悪いと、難聴者の耳には非常に聞き取りにくい。

昨日今日の話のなかでも出ましたが、防音室で設定した補聴器が役立たないのも、全部こうしたことにあるわけです。4人の難聴の人に実験をした結果なんですが、SN比がどんどんよくなって聞きたい音が15も浮き上がると、ちょうど普段のように良い聞き取りをしてくれるのですが、SN比が悪いと聞き取りが悪い。同じ実験を正常な聴力の学生10人にやってみました。

 

 

 

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