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を行うことが実用的と考えられる。

本来は機器の配置を考慮しなくて良いことが理想であるが、影響の度合いを複合している船舶という環境条件で予め推測できることは、設計にも現場においても極めて有効である。

 

6.2 船舶の安全性向上のためのEMC基準の採用

 

近年、船舶で使用される機器の相当数のものが、マイクロプロセッサを機能の中枢に使用している。昔はスイッチの接断を操作者が機械的な大きな動作で行なっていたので、EMCには強かったと考えられる。

しかし、前述したように機能の中枢を微弱な信号電流の変化で制御するもので、油圧装置や大型モータをアクチュエータとして動作させる形式では、外部からの電磁妨害の影響は大きい。しかも、その誤作動の結果は重大な損害や人への危害をもたらす。

工場における自動的な生産機器が暴走して人に危害を加えたような事件は新しい見聞ではなくなっている。船舶においても利便性の追求や新しい機能を付加して商品価値を高めるために、機能が集約された遠隔制御装置(例えばクレーンのリモート・コントローラやCPP、舵角およびサイド・スラスタのリモート・コントローラなど)などが増加しつつある。このような機器では、外部からの電磁妨害に対して充分なEMC対策を実施しなければならないことは当然である。この他の機器でも各種の情報通信機器などでは、送受されるデータ(情報)の誤りがおこらないように対策がなされていなければならない。同様に動作状態を監視するモニター装置(警報監視装置)が誤警報を発信するようでは、その誤警報がたび重なると警報の信頼性が下落し、俗にいう「狼少年」の問題となり極めて悪い結果をもたらす。

さて、船舶において使用される機器は、外部から影響を受けるだけでなく、その内部で使用されている電気・電子回路から自ら電磁波を発射して外部に妨害をだすことがある。たとえば、マイクロ・プロセッサを使用している装置では、デジタルの動作を1段階ずつ処理するためにクロック信号を使用しているが、このクロック信号の電流は小型の送信機並の出力に相当する場合もある。あるいは大型の電力制御装置として使用されるインバータでは内部のSCR(シリコン制御整流素子)は高速で大電流を流したり、切ったりするスイッチなので、この部分から大きな電磁妨害をさまざまな形で発生させている。

来年度は、これらのEMC対策について、できるだけ体系的にまとめることを計画している。

EMC対策およびCEマーキングの取得の認証は、製造者が第3者の試験機関に試験を依頼しなければならない。

 

 

 

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