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高齢者の雇用について、健康状態の良好な高齢者のほとんどが労働市場から引退しているが、経済活動に携わっている高齢者についても主にパートタイムの仕事に限られている。この点に関して注目したいのは、経済活動に携わっていない65〜69歳の男性高齢者のなかには、仕事を探しているが、まだ見つからない人もいるということである。台湾では日本のような「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」などは制定されていない。台湾の高齢者の再就職問題を解決するために、社会と企業主は高齢者が従属人口であるというイメージをかえさせることや、関連法令を制定し、雇用制度を弾力的に運用し、また民間の積極的参加などを通じて、シルバー人口の労働市場での価値を発揮させることが必要であろう。

そのほか、台北市と高雄市は「社区老人活動中心」(高齢者コミュニティセンター)を設立し、高齢者の勉強会、講習会、退職後の生活指導、余暇活動などのサービスを用意しているが、高齢者は行政が提供している福祉施策についてあまり知らないというのが現状である。広報活動を強化するほか、高齢者の相談センターを設立することを通じて、高齢者の各種の福祉施策に対する認知度を高めることによって、多元的な福祉サービスが提供できるであろう。

台湾は高齢化社会に入ったばかりといいながらも、最近一連の高齢者関連事件の発生がきっかけになって、高齢者のケアサービス政策の重要性と切迫性がようやく注目されるようになってきた。高齢者が輝く老後生活を迎えられるように、行政側は社会変動及び高齢者のエーズを十分に認識し、また民間活力と協力し、多元化・整備されたサービスが提供できるよう、対応しなければならない。

 

1. はじめに

 

近年、台湾地域の高齢者人口は絶対的数量上にも相対的数量上にも増えつつある。それに都市化程度の深化に加え、大多数の高齢者は「県轄市」以上の都市に暮している。工業化・商業化の影響に伴って、家庭の伝統的な扶養機能は崩壊しつつあるから、高齢人口、特に大都市に暮し

 

 

 

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