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ている高齢者にとって、老年医療保健(たとえば老人ホーム、特別養護老人ホーム、シルバーハウジング、老人病院等)、経済保障(老年年金、退職金、企業年金等)、居住、心理、社会適応(退職に関する指導、老年生活の再構築などの活動の提供)及び再就職等(再就職或いは転職のための必要な知識と技能の指導)のニーズの大幅な増加は切なる願いである。

高齢者人口のさまざまなニーズに対応するために、政府は高齢者福祉政策を計画し、いろいろな高齢者福祉施策を推進し、そして社会資源と結び付けることによって、家庭の介護力を援助している。

しかし、いったい公的部門及び民間部門が提供している資源は高齢者人口のニーズに対応できるのか? 本稿は比較的福祉資源の豊かな「直轄市-台北市と高雄市」を分析対象地として、公的部門の老人福祉施策と福祉サービスの提供、及び民間部門では現に利用できる資源を検証してみたい。また、行政側が提供した人口統計資料及び高齢者人口の無作為調査資料を利用し、台北市と高雄市の高齢者の居住・経済・健康・医療・雇用等のニーズを推定してみたい。そして、需要と供給のアンバランスによって生まれた社会問題を分析する。最後に高齢者問題の解決策を提出し、高齢者福祉の増進を考えてみたいと思う。

 

2. 人口と高齢人口の需要と供給

 

1996年まで台湾地域、台北市、高雄市の総人口は各2,147万人、260万人及び143万人であり、65歳以上の高齢者の総人口に占める割合は各7.57%、8.75%及び6.18%である。台北市の高齢人口率は台湾地域と高雄市より高いのは青年・中年層の人口移出によるからである。一方、高雄市の高齢者率の低い理由は青年・中年層の人口移入によるからである。また、台北市の高齢人口について、高雄市に比べると男女とも老化率が高い。これは中国大陸から来た「外省人」と言われる人の高齢化が台北市に集中していることによるといえよう(表1)

ここでは表1の資料及び台湾家庭計画研究所1996年開催された「台湾地域中高年者保健と生涯計画に関する調査」に関する大都市の資料を利用し、台北市と高雄市の要援護・要介護及び健康な高齢者の人数を算出し、彼らの居住・経済・雇用及び高齢者福祉施策への認知と利用状況から医療保健、経済扶助、再雇用指導とその他の社会福祉施策に対する需要をみていきたい。

 

 

 

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