日本財団 図書館


都市〔台北市・高雄市〕の高齢化問題とその対応策

 

張 明正(台湾家庭計画研究所所長・前人口学会会長)

 

本稿の目的

 

本稿の目的は、主に現存する関連資料を利用して、台北市と高雄市の高齢者の現状を分析するほか;高齢者福祉の増進のため、要援護・要介護高齢者と健康の高齢者の居住状況、医療保健、経済保障、再就職及び余暇活動等を評価し、解決方策を探ってみたい。

我が国で要介護高齢者にとってもっとも切迫な問題は、長期介護の人手や設備が足りないことである。要介護高齢者の介護については、ほとんど家族に任せているか、慢性患者の場合は病院のベッドを長期間で占用するか(社会的入院)、それとも認可されていない低費用・低サービス(サービスの劣悪な)の「養護中心」(養護センター)に入居しているかなどがほとんどであるが、一人で暮らしている重度要介護高齢者もいる。実際に「老人安養院」(養護老人ホーム)に入居を希望する要介護高齢者はわずかであるが、その割合は養護センターに入居している高齢者の割合よりやや高い。

高齢者養護施設の供給と需要のアンバランス状況と、国民が施設介護に対しスティグマを強く感じていることなどを踏まえ、台北市と高雄市は養護施設を大幅に創設して、その供給量を高めるほか;高齢者が居宅で自立生活ができるための支援策として、在宅介護サービスやコミュニティケアなどのサービスを通して、要介護高齢者に適切なサービスを行っている。と同時に、中・低所得階層の要介護高齢者の収容と経済的支援を実施し、65歳以上の高齢者に「全民健康保険」(国民皆保険)の保険費を補助する。そのほか、台北市は去年の末に「信義衛生所」において「台北市長期照護管理示範中心」(長期介護管理モデルセンター)を創設し、相談・施設変更の相談などのサービスを提供し、ケース管理のためのモデル事業を実施している。来年は一人暮らしの高齢者の通報制度及び緊急救護システムを導入し、救援と救護を有効に実施するよう計画している。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION