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示すように肯定的なものから,死別後1年以内,特に半年以内の場合には,感情的な揺れや自分の気持ちを表現することへの戸惑いなどがうかがえる。また「親睦も大切だが,それぞれ事情がある」といった意見もみられた。
 「家族の会」発足後の活動は図3に示す通りである。会は「共通な体験をした者同士がその体験を分かち合い,今後の人生をより豊かに健やかに生きていくための希望の方向性を見出そう」という目的で,10月に総会,3月に親睦会を開催し,会報を年4回発行している。会合での意見や各種案内への返事をみてみると,表2に示すように,体験や気持ちを共有できる意義や自己客観視できる利点があげられている。同時に,過去を振り返るだけでなく将来に目を向ける必要性や,ボランティア活動などへの期待といった前向きな発言もみられる。
 また,年2回の集まり(図5)以外に気軽に立ち寄れる会を希望するという意見を受けて,1997年11月から表3に示すようなミニ集会“ぶらっとスポット”がスタートした。役員の1人が進行役となり,お茶を飲みながら看護体験や死別後の生活などを自由に語り合う会で,毎月7〜8人が集まっている(図6)。その他,今後の活動として,ボランティア活動,各種学習会,旅行やサービス活動などさまざまな案が出されており,会員の意見
を聞きながら徐々に活動を広げていくことが合意されている。

          

 

表1 「家族の会」入会案内へのコメント

●お互いに励まし合い,慰め合うという目的がよいと思う。
●入会したことで少しでも成長できたらと思う。
●心に安らぎを得られるように。
●会報などを通して残された人の悩み,乗り越え方を知り
  たい。
●将来,病気で悩んでいる方やご家族を亡くされた方のお
  話相手になれたらよいなと思う。
●気持ちの整理がつかない。
●気力が出ない。
●皆と語り合うにはもう少し時間が必要。
●忘れたい気持ちと語りたい気持ちで迷っている。
●親睦も大切と思うが,それぞれ事情がある。

 

表2 「家族の会」に対する会員の意見

●会への出席や会報を通して,体験を共有できるのがよい。
●同じホスピスで介護体験をしたということで話しやすい。
●他者の介護体験を知ることで自己客観視できる。
●過去を振り返るだけでなく将来に目を向けたい。
●年2回の集まり以外に,気軽に立ち寄れる会があったら
  いいと思う。
●ボランティア活動や旅行,趣味の会など活動が広がるこ
  とを期待する。

 

表3 「家族の会」ミニ集会“ぷらっとスポット”

頻度: 月1回 午後1時30分〜4時
場所: ホスピス教育研究所カンファレンスルーム
内容: 療養生活,看護体験死別後の生活,医療問題など
     自由に語り合う。

 

考察

 共通の背景を持つ者が,その体験を分かち合う自助グループ(セルフサポートグループ)の意義は各方面で認められている。今回発足した家族の会も,体験を話し合う場や書く機会が提供される,他者の意見を知ることができる,死別後内に引きこもりがちであったものが外に目を向けるきっかけとなるなど意義が大きいことが認められた。

 

 

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