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考察

 以上,ホスピスを利用した患者の背景を紹介した。今回の調査は,入院時だけの,また,面接記録という間接的な情報の分析にとどまっているので,限界のある調査であるが,今回の結果から学ぶ点も多いように思う。
 一つは,ホスピスヘの入院という同じ選択をしていても,そこに至る経緯,病状の理解,入院を決めた要因などさまざまであり,ホスピス緩和ケアを受ける準備が十分できていない場合もある。そういう意味で,入院相談を受ける過程では,患者,家族,そして紹介をして下さる医療者とのかかわり方をさらに工夫する必要があること,また,入院後も,こちらの用意したホスピス緩和ケアの提供だけでなく,利用者の理解や期待を考慮することが,これまで以上に必要であることが再確認された。
 二つ目は,限られた数のホスピス緩和ケア病棟が適切に利用されるためには,一般の方,そして医療関係者に向けての教育啓蒙活動を進めることが重要である。
 三つ目として,在宅療養の継続が困難なための人院,また強い症状はないけれどもがんに罹患した高齢者の入院が増えていることに関して,他の医療福祉サービスとの連携の必要,特に,後期高齢者のターミナルケアの検討が急務と考える。
 今回の調査は,ホスピス緩和ケアの選択についての全体像を把握するために,基礎調査として行った。今後,さらに研究を進め,ホスピス緩和ケアが適切に利用されるための教育啓蒙活動,ケアの場の拡大,ネットワーク化など,検討を進めていきたいと考えている。

 

まとめ

 入院時の面接記録から,ホスピスを利用した患者の背景を調査した。ホスピスケアの特性をそれなりに理解し,利用しようとする者が全体の7割を占めていたが,在宅療養が困難なために,また,治療をした病院から転院を勧められたための入院が,合わせて約3割あった。ホスピス緩和ケアを提供できる場の拡大や,ホスピスが適切に利用されるための教育啓蒙活動の必要とともに,ケアの特性を十分理解していない場合,受け入れの過程で紹介者や利用者の理解や期待を十分考慮しながら進める必要が再確認された。

第22回日本死の臨床研究会年次大会 1998.11. 佐賀市

 

 

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