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 入院前に病名や病状を説明されているか否かについては,図3に示す通りである。病名について知らされているものは86.3%であるが,病状まで明確に説明されているものは60.7%であった。
 病名を知り,これ以上の治療は難しいということは理解していても,転移や予後については曖昧に説明されている現状がみられる。
 入院前の療養場所をみてみると,ピースハウスが開院した5年前は,ほとんどが病院からの転院であったが,今回の調査では,病院から直接転院したものと,在宅療養中であったものが半々であった。
 同居家族の状況は,図4に示す通りである。一人暮らしの者が17%おり,また,配偶者や親との同居の場合でも,同居者が高齢という場合も多く,在宅療養の継続の難しさが想像される。
 図5は,ホスピスを選択した理由を7つに分類し,患者と家族の言葉から,第1の理由と思われるものを当てはめてみたものである。
 まず,とにかく症状の緩和をしてほしいというものが28%,自分らしく生きたい9%,残された時間をおだやかに過ごしたい23%,そして,もうこれ以上の治療を受けたくないのでという者が9%であった。このようにホスピスケアの特性をそれなりに理解し,利用しようとする者が全体の7割を占めていた。
 一方,ホスピスの特性を利用しようというよりも,在宅療養が難しいために入院した者,また,治療を主目的とする病院のため転院を勧められ,そのまま同じ病院に入院を継続することが難しく,ホスピスへ転院したという者,合わせて約3割を占めていた。
 また,体験入院が3%あるが,これは,今のところ身体的に強い症状はないけれども,体験としてホスピスを利用し,これからの過ごし方を考えてみたいという場合である。なかには,ホスピス緩和ケアの選択に踏み切れない時に,体験という表現で入院をするということもある。
 全体の傾向をみてみると,統計学的な処理まではいかなかったが,ホスピスを自ら選択し,その特性を積極的に活用しながら自分らしく生きたいという方は,年齢的には若い方,また,がんの診断からホスピス入院までの期間については長い傾向があった。一方,治療経験がない方,病名を伝えていない方,在宅療養が難しいことがホスピス選択の理由となっている方は,いずれも年齢が高い傾向があった。
 なお,がんの診断からホスピス入院までの期間が短い場合をみてみると,治療が難しいなら残された時間を大切に過ごしたいと,ホスピスを選択してくるケースが多くみられる。しかし,特に医療者から「治療はできないからホスピスヘ」と勧められて転院した場合には,ホスピス緩和ケアを受け入れるのに困難を感じているケースもみられた。

 

 

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