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研究と報告

ホスピス緩和ケアの選択
その背景と今後の課題

日野原重明*1  西立野研二*2  松島たつ子*3

 

はじめに

 死をどこで,どのように迎えるかという問題への関心の高まりとともに,終末期を過ごす場所として,ホスピス緩和ケア病棟を選択する人が増えている。しかし,ホスピスヘの理解,利用に至る過程や選択の理由はさまざまである。今回,ホスピスを利用した患者の背景を調査し,今,ホスピス緩和ケアに求められているもの,今後のケアのあり方について検討したので報告する。
 なお,当ホスピスは,病院から完全に独立した病床数22のホスピスケアを専門とする施設である。これまでの入院患者は,主にがんの終末期患者で,平均在院期間は約40日である。

 

調査対象と方法

 対象は,1997年4月から1998年3月までの1年間に当院に入院した患者117名で,男性48名,女性69名,平均年齢は61.4歳である。
 方法は,入院当日,看護婦が患者と家族に対して病歴,患者の生活像,病気の受け止め方,ホスピスに期待するものなどについて問診をしたその記録から,入院までの経過,病気の受け止め方,入院の目的などについて調査した。

 

調査結果

 図1は,がんの診断からホスピス入院までの期間をみたものである。がんの診断から1年以内という者の合計は34%で,そのうち3ヵ月以内も11%あった。また,3年以上経過しているものは22%あった。
 ホスピスを選択する以前に,手術,化学療法,放射線療法,いずれかの治療を受けているか否かをみてみると,8割の人が治療を経験しているが,いずれの治療も受けずホスピスを選択した人が2割いた。
 最初の入院相談から入院までの期間をみてみると図2に示す通りである。入院の時期はベッドの空き具合との関係も大きいが,70%の人が初回相談から1ヵ月以内に入院していた。3ヵ月以上,なかには1年近く前より相談がある者もある。こうした方々には,治療中からホスピスを検討している例,また,ホスピスの選択についての家族内での意見調整に時間を要している例などがみられる。
 なお,入院相談はまず電話による相談があり,約70%が家族からの問い合わせ,15%が医療関係者より,また,本人からの直接の問い合わせば8%程度となっており,ソーシャルワーカーが相談の窓口となっている。

 

        

 

*1 ライフ プランニング センター理事長
*2 ピースハウスホスピス院長
*3 ピースハウスホスピス教育研究所部長

 

 

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