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 また,「これから自分が進行したがんと付き合いつつどのように過ごしていったらいいのか迷っている」という状況で,少し気持ちややり方を整理したいので,専門家のアドバイスも受けながら考える時間をもちたいというような利用のしかたもあると思います。一時ホスピスに入院して,自分の考えを導き出して,また次に選んだ方向に進んでいくという方です。
 そのように大まかな入院目標を立てます。もちろん,この目的は状況によってどんどん変わっていくものなので,一度立てたら絶対にそうするというものではありませんし,そのときの気持ちやからだの様子によって何度でも選び直し,考え直していいことなのだというようにお話ししています。もう最後のつもりで覚悟をして入院してきたけれど,やっぱり自分の死に場所はここではなかった,自分の死に場所は家だと思って,家に帰られて最後の時を過ごした患者さんもおられます。
 そういう意味からいえば,ホスピスケアというのは,どこで死ぬかということよりも,自分はどういう最後を,どういう場所で,どのように過ごしたいのか,それを実現するお手伝いをするケアだと思いますので,それができれば,その場がホスピスであれ,家であれ,一般病棟であろうと,どこででもできるケアだということができます。
 どんなケアがなされるかに関しては,まず不快に思っている症状を治療や看護によって軽減すべくマネジメントします。そうすることでその方が本来もっている力を十分に出して,最後までその方らしく生き抜けるようにお手伝いをすることです。ホスピスは死を早めることも遅らせることもしないというのが理念の一つでもあるからです。

 

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