日本財団 図書館


患者さんにとっては,いまは非日常的な状態なのです。日常の中で,その会社のデスクにいるときは,きょうは早く終わらないかなと思っているかもしれません。家にいれば,もうこんな家にいないで早く会社に行きたいと思っている会社人間もいるかもしれません。しかし,そういうものから離れた非日常の世界にいて,それらに非常にいとおしさを覚える。この非日常の中に,そういう日常の意味を逆に発見するようなことを患者さんはしているのではないか。ということは,私たちは逆に日常の中で,終わりとか,死とか,切ないほどのやっぱり遠くにある存在とか,それを忘れているのではないか。そういう時になってからというのではなくて,常に私たちの生活の中に死がある,別れがある。また,そういうものに触れていくんだ。そういう中で,日常の中の死や,非日常というものを感じとれる人こそが,非日常の中の日常を味わっているような患者さんの切なさ,他者への愛情というものに共感を覚えられるのではないか。
 もし,その共感が触れ合って共振するとき,孤立して苦しいところに立っている人は,たいへん深いところで,スピリチュアルな意味で癒されていく。つまり関係の回復がなされていく。
 癒しというのは,関係の回復だと思っておりますが,そういうことは非常に目に見えないところで起きますし,たいへん大きなことだと思っています。
 まだたくさんお話をしたいところがありますが,時間が過ぎてしまいましたので、この辺でお話を終わりたいと思います。

 

前ページ    目次へ    次ページ






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION