日本財団 図書館


 第3は,ボランティアにも技術が必要であるということです。その技術というのは,ある程度の知識とある程度の技能をもった上で,その技術を患者に適用するということです。病状をきちんと理解して,何をすればいいか,いつするのがいいかを読んでやるという,知識と技術を適用するわざを推し測る。音楽でいえば,バッハでもショパンでも楽譜は同じでもすが,演奏家によってその響きはみな違い,その曲の解釈やテクニック,そしてその全体のイメージは演奏家によってそれぞれ違うように,ボランティアがターミナルの患者にアプローチするときの技術も単なるテクノロジーではなくて,アートの域にまで高められたものでなければならないということです。英米で臨床医学を確立した19世紀の医師,ウィリアム・オスラーが「医学というのは科学に支えられたアートである」と言っていますが,その“アート”というのは“技術の適用のわざ”のことを言うわけですが,それと同じように,ボランティアにもその“適用のわざ”が必要だということです。

死の過程での癒し

 もう少し癒しについて話を続けたいと思います。
 われわれが人に接する場合には,その人は肉体をもった人間であると同時に,知性をもっています。ものを考えたり,感じたりするマインドをもっています。そして,もう一つはスピリットという世界をもっている存在であるということです。
 私たちがホスピスで相手をする患者さんは,間もなく亡くなられるのだけれども,その人は亡くなって消滅するのではなしに,そのスピリットは昇華し,どこか愛する人たちの間に存続していると考えてみてはどうでしょう。

 

前ページ    目次へ    次ページ






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION