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というのも15年前の緩和ケアは,英国でも始まったばかりでした。そしてまた私たちが死ぬということはそう怖いことではないと話すべきメッセージもありました。
 ホスピスのイメージというのは,花咲き乱れる素晴らしい魂の心豊かな世界というものでした。そして,そこで働いているナースは天使のように素晴らしい人たちということでした。そういう意味では,死ぬということにまつわる苦悩を多少なりとも認めない,否定するというような形でやってきた部分があったかもしれません。死というのは他の人におこることであると思っていて,私は死んでいく人の苦悩や苦しみを十分に受け入れたり理解することができなかったように思います。いまは死んでいくことにまつわるストレスについては学習している途中であるということで自分を考えるようになりました。そして,身近にいた人が亡くなるという体験をしたことにより,急に死という問題が私にとって身近なものになりました。つまり,自分の個人的な死に対する考え方が自分の仕事の中に入ってくるような体験をして,非常に私も苦しい思いをしました。

チームとストレス

 私たちの体験の共通点は何でしょう。マルチプロフェッショナルなチームで働いていると,みんなこんなことを思ったことがあると思います。会議をやっていて,会議の進行を聞きながら,自分の心の中ではほかにこんな考えをもっている人はいないのだとか,私よりもほかの人がやったほうがよほどうまくいくとか,もしもここで私が何か言ったら,この人は何も知らない,何もできない人だと思われないかと……。

 

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