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競争的な人間関係だとかライバル意識によって時間とエネルギーが浪費されることになりかねません。ミーティングを重ねても全然きちんとした意思決定ができないという結果になってしまいます。
 チームケアといっても,チームのメンバーは,患者さんは自分のものだ,家族はこのチームのものだといった所有意識を持ってはいけません。既存のケアと協力をしながら,引き続き患者さんにケアを提供できるものでなければなりません。なぜならばここに緩和ケアの危険性の一つがあるからです。それは,自分が全部できるというように,自分をスーパーマン的に思い込んでしまうということです。状況を救済できる救世主は自分一人しかいないと思ってしまい,家族が提供する力をもっているということ自体を否定してしまうことがあるからです。ですから一人でケアをするよりはチームでケアするほうがリスクをフォローすることができると思います。それから患者本人や家族の望みを聞き入れようとする心の余裕もできるはずです。そして当然のことですがチームがチームとしてうまく機能するためには,コミュニケーションがとても大事です。コミュニケーションが鍵を握っているともいえるのです。
 さまざまなプロフェッショナルをグループに集めただけで,それをチームと呼んで機能すると思うのは単純すぎます。たとえばサッカーのチームは毎週40時間もチームワークの練習をして,90分の試合にそのチームワークを発揮するのです。ところが,組織に所属する人たちには,チームワークを練習する時間が与えられていないのです。そして逆に週に40時間はチームワークをもってことに当たらなければならないという状況にあるわけです。これを考えてみても,私たちの仕事にチームワークを上手に適用していくのがいかにむずかしいことかがおわかりと思います。

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