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知的障害者福祉研究報告書
平成8年度調査報告


ワーキング等議事録

「知的障害者福祉研究会」第2回ワーキング議事録

日 時 平成9年1月13日(月) 13:00〜17:00

会 場 (株)福祉開発研究所5階会議室

(順不同・敬称略)

出席者 北沢 清司(大正大学人間学部 教授)
      廣瀬 貴一((福)皆成会「光の園」 園長)
      渡辺 勧持(愛知県心身障害者コロニー「発達障害研究所」社会福祉学部長)

ビデオ制作  岸  善幸((株)テレビマンユニオン)

オブザーバー 宮森 達夫((株)福祉開発研究所 企画部 部長)
記  録  小林 直樹((株)福祉開発研究所 企画部)

資 料     知的障害者の「グループホーム」の住まいに関する調査研究企画素案
         知的障害者の「グループホーム」の住まいに関する調査研究打ち合わせ記録
         取材予定項目について(日本編ビデオ)

発言内容(敬称略)

宮 森  去年の12月26日に日本財団とお打ち合わせを行い、2つの調査研究と国内編ビデオの制作について基本的に承認をいただいた。今後のスケジュールとしては、計画とその費用を3月頃までに固めて、4月に入ってすぐに契約作業を行って、事業をスタートできるような方向性でいきましょうというお話を受けた。
大きな柱として4月以降のスケジュール、研究体制、費用等について決めていただきたいということである。

●「全国グループホーム調査」と「住まいに関する調査研究」の関係性について

渡 辺  来年度の事業としてビデオの制作、萩田先生が担当する住まいの調査、全国グループホーム調査と、3つの事業があるが、どのような関係をもって進めていくのだろうか。

廣 瀬  住まいの調査研究は、萩田先生が中心になって、研究体制としての人材もそろえられているので、われわれとしてはオブザーバー的に関わっていけばよいのかと思う。

宮 森  萩田先生と1月10日に打合わせを行ったのだが、立地、建築条件等の国内調査として渡辺先生の研究グループと合同で調査を実施する部分については、萩田先生が設問設計を行い、それをもって全国グループホーム調査の会議に出席するというお話であった。また、「グループホーム型居住システムを支える制度の現状調査」についても、渡辺先生の研究グループと連携しながら行いたいというお話を受けている。

廣 瀬  制度の調査については、各ブロックの担当者が県の担当課に行って、調べて来てもらうのがよいと思う。萩田先生と調整しながら、二度手間にならないように一回でできた方がよい。

宮 森  住まいの調査研究の全体的なスケジュールとしては、「国内調査」は4〜5月くらいに設問を設定して、6〜7月には調査を実施できるように進めたいということであった。
また、「住まい方詳細調査」は、6月ぐらいまでに会議を2回程度開いて、全国グループホーム調査の結果等も踏まえながら7月頃から実施できればというお話であった。

廣 瀬  われわれの方も4〜5月くらいにまでには、設問を絞って調査票を発送できるまでに準備を進めていく必要があるだろう。
また、「住まい方詳細調査」の訪問先については、全国グループホーム調査の研究グループと合同で会議ができれば、いろいろな情報交換ができると思う。

●「全国グループホーム調査」の調査研究体制について

渡 辺  全国グループホーム調査も基本的には、各ブロックごとに動いていくことになるので、なるべく早いうちに各ブロックの人を決めて、一度集まりたいと思っている。
今日は、基礎調査と本人調査、世話人調査の枠組みをどのようにしていくか、もう一度検討したい。
基礎調査については、各ブロックで人が決まれば、回収率も含めてかなりやれると思う。問題は本人調査と世話人調査の構成をどうするかである。
本人調査について、今考えているのは、厚生省心身障害研究の河東田先生の班がかなり活発に動いているので、できればその辺の力を借りながら進めたいと思っている。グループホームに住んでいる本人がどう思っているのかに焦点を当てながら、基礎調査とは別に、研究班を組織して行いたい。

廣 瀬  本人調査は、各ブロックごとに何ケースかを調査してケーススタディを行うのがよいと思う。グループホームに住んでどこが良くて、何が変わったのかというところを聞きたい。そのようにポイントを絞って、その本人が知っている人に聞き取り調査を行ってもらうのがよいだろう。ただ、任せきりではなくて、渡辺先生や私が直接行くことも必要である。ケースをどのくらいにするのかなどについて今日決めておきたいと思う。

渡 辺  世話人調査については、できれば世話人さんの研究グループを組織して、世話人さん達で一度自発的に調査を行ってもらうことを考えている。そうして制度や仕事の仕方を考えていくことができればと思う。その研究班には私も入るが、なるべく世話人さん達の考えを尊重するような形で進めたい。

北 沢  本人調査、世話人調査で、それぞれ研究班を組織する場合には、かなり綿密に渡辺先生とコンタクトをとりながら行わないと難しいと思う。
全体を把握している基礎調査の各ブロックの責任者が本人調査、世話人調査の研究班に入っていれば、やりやすいかもしれない。ある部分だけを世話人さんに頼んでやるということになると、全体が見えなくなる可能性がある。萩田先生の案をみていると、その部分もかなり配慮している気がする。

廣 瀬  各ブロックでコーディネーターになってもらう人は、基礎調査も把握していて、全体にフィードバックできる人を選んだ方がよいだろう。

宮 森  全国をだいたい何ブロックに分けて行うとお考えだろうか。

渡 辺  愛護協会のブロック分けに即していて、9ブロックを想定している。
全国グループホーム調査全体の責任者は、私と廣瀬先生が務めるとして、9ブロックの人を決めた後、一度集まってもって、調査項目の提案等を行いたい。

●スケジュールについて

宮 森  研究体制としての人選と、スケジュール、費用等について決めていただいて、2月の末頃までに事業計画書が作成できればと思うのだが。

渡 辺  最初は、ビデオと調査報告書の同時配布ということで1カ年で考えていたが、スケジュール的に1年では厳しい感じはする。

北 沢  本人調査、世話人調査は、基礎調査の結果等をみながら少し時間をかけてやった方がよいのではないか。

廣 瀬  萩田先生の研究も1カ年ではきついと思う。

北 沢  ビデオを配布するときには、基礎調査の結果が出ているので、それは入れられる。本人調査、世話人調査はその次の段階だと思う。

廣 瀬  本人調査も世話人調査ももちろん準備を進めながら、2カ年ということで計画を立てたらどうだろうか。

渡 辺  できれば、1年目は基礎調査をやって、次年度に本人調査、世話人調査を行うという形にしたい。その線で、もう一度検討し直して、私の方で案を作って、お送りする。

●日本編ビデオの制作について

岸    スケジュール的には、取材に入ってから納品するまでで、だいたい6〜7ヶ月ぐらいを想定している。そのうち取材に3〜4ヶ月かかると思う。

廣 瀬  一番大事なことは、どのような視点から撮るかということと、どこを撮るかということだと思う。また本人や親、その周辺の人々の声は入った方がよいと思う。

岸    今回、日本財団のドキュメンタリービデオとして、どのようにメッセージを送るのがよいのか、その辺の色はまだ見えていない。
また、スウェーデン編を去年制作したので、そのシリーズとして、日本はどうなのかというところがある。その際に伊達のようなところを撮るのがよいのか、あるいはこれまで取り上げられたことのないところを撮るのがよいのか、という問題はあると思う。
春にはロケーションに出たいと考えているので、それまでに先生方から意見をいただきながら、もう一度池田にロケハンに行ってもらうことを考えている。
日本財団のVTRとして、先生方の研究も含めて、どういう部分を織り込んだ方がよいのか、方向性についておうかがいしたい。

廣 瀬  一つの示唆として、大阪の山川宗計さんを紹介するので、大阪の育成会が運営しているグループホーム、大阪の状況を見てくるとよいのではないか。

北 沢  日本の場合は、分を超えて世話人がなんでもやってしまうということがある。
分を超えてやってしまうことが、果たして長続きすることになるのか、あるいは数が増えていかない理由になるのか、ここの所が丁度今狭間にあるのではないかと思っている。外国のように、仕事は仕事というようにある程度割り切ってできないと結果的に世話人が抱え込むような状態になってしまう。そういうことでは数が増えていかないと思う。
独立型というか、バックアップ施設はもっているけれども、あまり関係していないようなところはないだろうか。

廣 瀬  名古屋に結構沢山ある。今度、名古屋で会議があるので、どこがおもしろいかいくつか推薦してもらって来ようと思う。

北 沢  長野市内に、福岡さんや佐藤進さんが援助しているグループホームがあるのだが、そこはバックアップ施設がはっきりしていないで運営していて、独立型として捉えられる。40代以下の親たちが地域で暮らすように頑張っている例として、入所施設でしかやってこなかった長野県の中での対比としてはおもしろいかと思う。

渡 辺  グループホームとして池田さんなりに何を訴えたいのかということは、聞かれているだろうか。

岸    それについて言えば、まだ曖昧である。本人の声をどのようにひろい集めるのかという部分で言うと、今は、先生方からいろいろなアイデアをいただいて、そこを見て、取材のモチベーションがより高まるところがあれば、そこを取材予定先として変えられるという状況にある。彼の中で一番最初にあったのは、前編、後編の2本立てにして、前編は施設から出てというくくり、後編は、独立型というか、施設とは関係ない部分での知的障害者の方をとりまく福祉というくくりでの考え方があった。

渡 辺  本人の声をどんどん聞いていけば、そこで訴えるものは、ある意味で普遍的というか、人として生きるということはどういうことかというような方向へ進んでいくような気がするのだが。

岸    渡辺先生が仰ることはよくわかる。人間の生き方のようなところに集約されていくと、ある意味では当たり障りのないものになる可能性もある。そこはだれもが否定できないメッセージになってしまう。それに関しては、今回私がプロデューサーとして、そういうドキュメンタリーにはしたくないと思っている。
そのようなことから本人達とコンタクトをとるのも、かなり時間をかけて取材し、本人の声というのも、私達がもっているような基準ではないレベルで聞き取らないといけないと感じている。

廣 瀬  優等生的なものを撮りたいとは思わない。そういう意味では、かなり自由な雰囲気で生活のうるおいのあるグループホームや、逆に中でのいろいろな規制に反対している利用者がいるようなグループホームなど、何か特徴のあるようなものが撮れればと思う。

岸    本人達の本音を聞き出したいということから、時間をかけた取材を行いたいと考えている。
スウェーデン編では、施設から出た人達を描いたが、日本編では施設から出たというところだけではなくて、地域でずっと暮らしている人達の本音とともに制度の話までいけるようなものにできればと思っている。

廣 瀬  本音を言っていて面白い、という本人の発言はなかなか少ない。

北 沢  本人部会に関わっているような本人達は、テレビのマイクを差し出されたときに、どのように答えるかというとことをトレーニングされているようなところがある。
重い人が利用しているグループホームを取り上げれば、その人の日中の活動は押さえることはできる。地域での生活は居住の部分だけで成り立っていないわけであるから、柴田先生が仰っていたデイセンターに近いものも押さえられると思う。

廣 瀬  制度的な側面としては、親、世話人、行政官などが登場して、将来的にもっとこうした方がいいというようなことを話してもらってよいと思う。

北 沢  日本の世話人は年齢層が高い。スウェーデンなどを見ていると、若い人がグループホームで援助職員として関わっている。あのようなスタイルでないと難しいと思う。

廣 瀬  名古屋では県が給料を上げたから結構若い人が多い。名古屋は言葉も名古屋弁で取材先として面白いと思う。

北 沢  世話人の年齢層にも注意しておいて欲しい。若い人でもやれるんだということを、知って欲しいと思っている。人生経験が豊富でないと、世話人はできないというような考え方はおかしい。またグループホームをもつということは、結婚して、グループホームから出て、その近くに住んでいる人達をも視野においた支援をするとことが本来だと思う。それを切ってしまうのは、私からするとグループホームではない。
できれば、農村型のグループホームも一つ取り上げて欲しい。

廣 瀬  農村型ということでいうと島根の室崎さんのところがよいのではないか。
大阪、名古屋、島根というところでよいところが出てくると思う。

北 沢  重い人の部分が明確に描けないようだったら、横浜を取材先として考えたらよいと思う。

岸    今日お話をいただいたところで、次のミーティングまでにロケハンを行い、それを次回報告する。
最終的には今度のミーティングのさらに次の打ち合わせの時に取材予定先をある程度確定させたい。来年度の納品ということで、一回目の取材を終わってから、ナレーションは入れていないラフな感じの2時間程度のVTRを見ていただいて、さらにこういうメッセージを織り込もうという意見をいただきながら制作できると思う。そういうことから取材としては秋までに一回終わらせて、さらに場合によってはもう一度取材にいくことになるかもしれないと考えている。

以 上


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