日本財団 図書館


知的障害者福祉研究報告書
平成8年度調査報告


ワーキング等議事録

「知的障害者福祉研究会」第1回ワーキング議事録

日 時 平成8年12月9日(月)

第一部 13:30〜17:00
内容:知的障害者のグループホーム白書の制作について
知的障害者の住まいの研究について

第二部 18:00〜20:00
内容:「街に暮らす」日本編ビデオの制作について

会 場 (株)福祉開発研究所5階会議室

(順不同・敬称略)

出席者 柴田 洋弥((福)武蔵野障害者総合センター「デイセンター山びこ」施設長)
萩田 秋雄(筑波技術短期大学建築工学科 教授)
廣瀬 貴一((福)皆成会「光の園」園長)
渡辺 勧持(愛知県心身障害者コロニー「発達障害研究所」社会福祉学部長)

ビデオ制作  岸  善幸((株)テレビマンユニオン)
池田 雅之((株)テレビマンユニオン)

オブザーバー 宮森 達夫((株)福祉開発研究所 企画部 部長)
記 録    小林 直樹((株)福祉開発研究所 企画部)


資 料 全国グループホーム調査の必要性について
知的障害者の「グループホーム」の住まいに関する調査研究企画素案番組制作履歴書

発言内容(敬称略)

●全国グループホーム調査の必要性について

宮 森  日本財団がこの調査を実施する上で、その意義について再度確認させていただきたい。

渡 辺  全国のグループホームの実態について、これまで厚生省においても、愛護協会においても調査が行われてこなかった。どこかが実施できるような体制も整っていない。

廣 瀬  これまで断片的、ブロック的な調査はあったが、全国的な調査は行われてこなかった。

萩 田  最終的には、モデル的な事業、モデル設計などを立ち上げるために、このような基礎調査は必要であると思う。

廣 瀬  全国的な実態把握がされていないので、それぞれの地方自治体制度の良い点、悪い点が、その他の地域に知られていない現状がある。

渡 辺  どこの県でグループホームをもっているかということは、育成会でわかっているのだが、それが増えているのか、減っているのか、国の制度に乗り換えているのかということが全然わかっていない。

廣 瀬  強調して良いと思うのは、グループホームを利用している人が本当に満足しているのか、どうかが明確になっていない。そういうことを一度しっかり表に出した方が良い。

渡 辺  全国調査をすることによって、重症心身障害や高齢者の地域生活の状況が浮かび上がる。この実態が、これまで明確になっていないため、この実態把握によって住まいのあり方の研究等、関連する分野の研究の資料として役立つ。

萩 田  もう一つの側面として、全国の地方自治体の制度の積み上げを行うことによって、モデル地区を探すことにつながる。逆に言うとこのような調査を行わないとわからない。

廣 瀬  調査した報告書は、これからグループホームを実施しようとしている人たちの参考になる。

●知的障害者の住まいの研究について

萩 田  建築サイドでは全国調査に基づいて、例えば100程度の事例を通して、住まい方の調査を行って、実際に生活と建物の関係で、いろいろな解決法を考えていくということを踏まえた報告書としたい。
基本的には「住まい方詳細調査」(※住まいの研究企画素案参照)をメインとしたい。
それぞれのブロックに人を配置して、年間3〜4回の全体の打ち合わせを行いながら進めていきたいと考えている。
「全国グループホーム調査」・「グループホーム型居住システムを支える制度の現状調査」(※同企画素案参照)は、「グループホーム白書」の調査と一緒に調査できる。
外国の状況をなぜ考えるかというと、「日本型」ということを考えるために、外国の資料を集めるだけでもかなりの参考となるし、分析を行えばおもしろいものとなると思う。そうして日本型のグループホームとは何なのかということでのモデル提案と、設計計画を提示したい。
スウェーデンやイギリスでは「住居法」があって、「一部屋〜?u以上」「室内温度」などが決まっている。イギリスでかなり進んでいて、住居監視委員が見回っていて、違反すると是正命令が勧告される。それに対して日本では「住居」というコンセプトがなく、バラックでもなんでも住居になってしまう。

廣 瀬  スウェーデンでも、「どれくらい日があたるか」等を始めてとして、トイレや台所、冷蔵庫がないものは住居として認められない。

宮 森  詳細な調査の項目については、組織した段階で詰めていくということで良いだろうか。

渡 辺  住居との関係を踏まえながら詰めていきたい。

●調査研究の作業スケジュールについて

廣 瀬  日本編ビデオの制作委員については、研究会の委員を基本として、あまり分散させない方が良いのではないか。方法としては、調査の打ち合わせの時などに重ねて、ビデオの打ち合わせを行って良いと思う。

渡 辺  「グループホーム白書」の制作においては、3月までに、9ブロックの代表者を決定し、1回集まって打ち合わせを行いたい。
本人と世話人を対象とした調査については、それぞれ3〜5人程度の担当する人を決めて、3月までにチームを編成したい。その全体の会合を1回と5人づつのグループでの会合を2回程度行いたいと考えている。
また、ブロック代表者が集まったときには、今日のような打ち合わせで決まった調査項目をたたき台として、1日程度ディスカッションを行いたい。そして、来年度にそれを各ブロックに持ち帰ってもらって、検討してもらう形にしたいと考えている。
本人を対象とした調査については、今年度は、スタッフの人に集まってもらって、調査内容の案を話し合ってもらう所までと考えている。
3月までに、各ブロックの代表者に集まってもらって、アンケート項目等について、話し合い、平成9年度の調査計画書として、日本財団に提出できるまでにしたい。
住まいのあり方調査と重なる部分については、ブロック代表者が集まる前に、今日のような打ち合わせにおいて、項目を詰めたいと考えている。

萩 田  住まいの研究調査においては、全体での打ち合わせを2回程度、事務局の打ち合わせとして4回程度を考えている。
報告書の捉え方として、住まい方調査とグループホーム調査は、一つの白書、一緒のものとして出されるのだろうか。

渡 辺  建築面からのものとグループホーム調査は、分けて出した方が良いと思う。建築は建築だけで広く出回るところがあり、少し違う性質もあると思う。二つで一つのセットとなる形が良いと思う。

萩 田  チームとしては別にしながら、一緒にできる調査、作業等について明確にしていけば良いだろう。

渡 辺  調査項目の細かい部分についてのたたき台を、みなさんと連絡を取り合いながら用意したいと思う。それで来年の1月にもう一度このような形で集まって、調査項目について詰めたいと思う。

●レスパイト、ショートステイの調査について

柴 田  グループホーム調査に合わせて、ショートステイの調査を一緒に織り込めないだろうか。

廣 瀬  法人を調べたときにはできるかもしれないが、グループホーム自身が一緒にもっているということはあまりないのではないか。

柴 田  グループホームといいながら、1〜2年という期間のものもあるし、もっとショートのところもある。そういう意味で一緒に調査ができればと考えた。

廣 瀬  物理的に責任を持ってできる範囲として、ビデオの制作を含めて今3本上がっているので、結構大変だと思う。

渡 辺  グループホーム調査において上がってきた、ショートステイ、レスパイト等のデーターを基礎データーとして、来年度、ショートステイ、レスパイトの調査につなげていってはどうだろうか。

柴 田  永住型の他にショート、ミドルステイを打ち出す必要がある。
これについては次の課題として上げておいて、その間に下準備を進めながら、提案を行いたい。

●日本編ビデオの視点について
池 田  スウェーデンでみてきた現状と、日本でみた現状を比べてみたときに、一番強く感じたことは、スウェーデンの本人の人たちは自分の気持ちを自己開放していて、明るい印象があった。日本の人たちも明るいことは明るいが、どこかに悲しさ、陰が見える気がした。本人の人たちと、「そういう気持ちをもったのだが」と話したときに、「それは、私たちが日本の社会の中では知的障害者というレッテルを貼られ続けてきているからだと思う。」という話を聞き、印象に残った。
スウェーデンの場合は福祉を作り上げていく過程で、障害をもっている人ともっていない人が、お互いに人間として話し合って、福祉を作り上げてきたことから、まちの中で暮らしても、同じ人間として暮らしていけると思うのだが、日本の場合は、そういうことがされてきていない。
日本とスウェーデンの一番の違いは、本人の人たちの声に耳を傾けていない点ではないか。傾けはじめてはいるとは思うが、根っこのところで軽く考えられているのではないか。この番組で一番伝えなければいけないことは、今まで無視され続けてきた本人の人たちの声、思いをどれだけしっかりと拾っていけるかということだと思う。本人の人たちの声を中心として、どんな生き方、生活をしているのか、どんなことを思っているのかということを中心とした番組を作りたいと考えている。

岸    今回の日本編ビデオは、スウェーデン編の続編というイメージを持っていたのだが、まず先生方の考えている視点をいただいて、現場に行く人間としての視点をつけ加えさせていただきたい。

柴 田  「施設を出てまちに暮らす」と「施設に入らないでまちに暮らす」ということで言えば、今の要請は、「施設に入らないでまちに暮らす」ことの支援に早急に取り組んでいかなければいけないと思う。何故かというと、今第二団塊世代の20代前半の人が非常に大勢いる。その世代が今養護学校から続々出てきて、通所に通い始めている。その世代を施設に追いやらないことが必要である。それは時間の勝負の段階にきている。このままほっておいては、親が支えきれなくなったときに施設になだれ込むという可能性もある。
通所に子どもが行き始めた親の世代、50代からの下の親は、かなり地域志向が強い。この親たちが元気なうちに地域生活を作り上げないと、この波は去ってしまう。地域の中で暮らしている実態を取り上げて、親たちに「まちの中でやれる」という展望をもたせることが大事だと思う。
重度の人も含めた完全なシステムはまだ出来上がっていないが、取り組んでいるところはあるので、数十万程度の人口の範囲の中で、地域の中で完結しているところをいくつか取り上げて、システムを紹介していくということをやったらよいのではないか。横浜市もそうであるが、東京では世田谷区。ショートステイもあるし、通所が非常にしっかりしている。それから藤沢市、ここは人口40万人であるが、入所施設、通所授産、通所更生、グループホーム、小規模作業所があり、まち完結型である。入所施設はあるけれども、土日は家に帰すという形で、入所施設を使ってショートステイをやったり、入所施設という制度を使いながら地域の中で踏みとどまっている例である。関西では西宮市、ここでは、町内会の中に自らを位置づけ、町内会の運動会などに
も参加している活動がある。先般の震災の時には、真っ先に近所の人が助けに駆けつけた。
また、広島の因島、ここは人口2万人の島であるが、入所施設を作らないで、重度も軽度も島の中で完結してやろうと取り組んでいる。グループホームや通所も作っているし、非常にしっかりした方向性をもっている。これらのところなどを取り上げて、展望の見えるものを作って欲しいと思う。
NHK厚生文化事業団で3年越しでビデオを作っている。4巻シリーズで、一昨年作った第1巻は中軽度の人を対象として、家族で一緒に暮らして作業所に通っている人やグループホームで暮らしながら企業に勤めている人、両親が亡くなって一人で公営住宅に暮らしているところに、様々な援助が行われているというような事例を取り上げている。
第2巻では自分たちの主張をみんなで話そうということで、自分の生い立ちや仕事のことや障害のことなど、様々なことをディスカッションしている模様をビデオにとった。これは3月に出されている。
第3巻は重度の人の地域の暮らしとして、グループホーム、通所施設、また、まちの中でいろいろ受けて入れているサークル活動なども取り入れている。これは来年の3月に出される予定である。これらと同じようなものを作ってもつまらない。この中で欠けていたものは、地域モデルである。

池 田  システムを見つめていくのではなくて、まちの中で暮らしていくときに大切なことは何なのかということの本質を描くことが大切だと考えている。

柴 田  中軽度の人たちは、ほっておいても施設には入らない。問題なのは重度の人たちである。重度の人も施設に入らなくてもやれるんだということを訴えていきたい。

渡 辺  地域の中での人との関わりを取り上げることも大切であるが、人が支えていくということに落ち込むのではなく、やはりシステムとの関わりを通して支えていくということを出していく必要があると思う。

廣 瀬  視点としては、本人たちの言葉を中心として、障害の重い人でも語りかけるようなものを出していくと同時に、親や関係者も出てくるようなものにした方が良い。本人に話を聞けば、自分たちが一番何を欲しているのか話してくれるだろう。
また、「施設を出て」というより、問われるべきは、何故施設に一回入れて、出しているのかということであるから、いい意味でも悪い意味でも入所施設にも近づいた方が良いと思う。非難するということではなく、実態を映像として示す。対比の面からも映像の中に入所施設は出した方が良いと思う。
取材先としては、伊達では普遍性がないのではないか。最近、大阪がかなり奮闘していると感じている。

岸    報告のビデオではなく、ショックを与えるぐらいものにしないとムーブメントは起きないと思う。

柴 田  ここ2〜3年で一番大事なことは、団塊の世代が子どもを施設に入れないようにするアピールである。

廣 瀬  これからの世代の人にアピールするビデオで良いと思う。

岸    知らない親御さんたちが見て、インパクトをもてるようなものにする必要があるのではないか。スウェーデン編を見て、「スウェーデンだからできたのでは」と言った人たちの言葉を否定できるものにしたい。

萩 田  難しいと思うのは、良い実践を行っていると言われているところでも、本当の所と表向き部分がある。その辺の利用者の本音はきちっと見ておく必要がある。

廣 瀬  本人の言葉や親の言葉をキイワードとして、膨らましていくようなものができればと思う。
また、重い人と軽い人を撮ることは良いと思う。難しいが、親が一番困っている行動障害の人たちも撮れたらと思う。

池 田  今回のビデオで描きたいのは、そこのシステムを紹介するのではなくて、そこで生活している人に会って、その人がどういう姿を見せてくれるのか、どういうことを話してくれるのかである。システムで場所を選んでいくのではなくて、そこで生きている人が今どういう状態にあるのか、というところで考えていきたいと思う。

廣 瀬  本人の言葉は大いに取り上げて欲しいし、家族と親も鍵を握っていると思うので、その人たちの思いを吐き出させるようなものにした方が良い。

萩 田  グループホームのシンプルないい面として、グループホームに入って元気になった、明るくなったというところもしっかり撮って欲しい。スウェーデン編の博物館での映像のように、実際のことを撮って、感心できるようなものになればと思う。あの博物館での取組はただ仕事を紹介しているだけのように見えて、実に素敵なフィッティングがされている。いろいろな問題点をあげるだけでなく、ああいうものがベースにあると良いと思う。

●今後の作業スケジュールについて

岸    日本編ビデオは、同じ日本人だけに、時間のかかる取材になると思う。いいものを作るために、どこを取材するのかということを早めに選定して、アパートを借りるぐらいの気持ちで取材しようと話していた。
これからロケーションを進めるにあたって、池田は二つの課題を負っている。一つは、彼が撮りたい「人」を探しにいくということ。もう一つは、このビデオに確実に盛り込まなければいけない情報を取材できる「まち」である。このうち、撮りたい「人」を探すということには、かなりの労力がかかることになると思う。この部分については、みなさんからいただく様々な情報から、少し度外視しないと見つからないのではないか。そこに関しては、ある部分まで自由な領域を池田にとらせていただければと思う。
ただ、伝えなければいけない情報については、みなさんからどんどん意見をいただきたい。

渡 辺  われわれが提供する資料を池田さんなりに選んでもらえればと思う。

廣 瀬  大阪の山川宗計さんのところに行って、大阪のグループホームの取組を見てくると良いと思う。

萩 田  もう一つ別の側面として、重複の中でも視覚障害、聴覚障害の知的障害者がいる。この二つの分野においてはまだ施設づくりに動いている。そういう現実があるということを難しいかもしれないが、ちらっとでも入れておく必要があるのではないか。

岸    もう1回、みなさんから意見をいただく場を1月か遅くとも2月までに開いていただいて、脚本の制作を行いたい。

渡 辺  1月に、今日のような会議を開く予定だが、その時に一緒に行ったらどうだろうか。
1月頃に調査の各ブロックのスタッフが決まるので、そういうところからいい情報が入るかもしれない。

廣 瀬  1月か2月に通所施設の集まりがあるので、そういうところに出れば、またおもしろい話も聞けると思う。そうして、4月ころからスタートできれば良いと思うのだが。

宮 森  できれば、今年度あと1回研究会を開かせていただいて、研究の進め方を日本財団に示していただければ良いと思う。

渡 辺  今日のような会議を1月にやって、その後すぐということになるのだろうか。

宮 森  今はわからないが、2月の下旬か3月の上旬になるのではないか。

廣 瀬  次の1月に行う会議も、今日のように基本は研究会の委員全員に呼びかけて、都合の良い範囲で出席いただく形にしたいと思う。

以 上


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