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知的障害者福祉研究報告書
平成8年度調査報告


第1章 わが国のグループホーム制度とその動向

2 グループホームの制度化

平成元年度予算は平成元年(1989年)5月28日に成立。精神薄弱者のグループホームは翌5月29日付で制度化された。すなわち、厚生省児童家庭局長から「精神薄弱者地域生活援助事業の実施について」として、各都道府県知事宛「精神薄弱者地域生活援助事業実施要綱」が通知された。
グループホームは「地域社会の中にある一般の住宅(アパート、マンション、一戸建て等)において、数人の精神薄弱者が一定の経済的負担を負って共同で生活する形態であって、これに対して同居あるいは近隣に生活している専任の世話人により、日常生活援助が行われるもの」と定義されている。地域生活援助事業(グループホーム)の概要は以下のようなものとなる。

?@基本的性格はケア(世話)の提供である。

?A建物提供はなく、アパート・マンション・一戸建の住宅を利用。個室を原則とする。

?B入所者は日常生活上の援助を必要とする15歳以上の精神薄弱者で、就労(福祉的就労を含む)しており日常生活を維持できる収入がある者とする。

?C定員は4〜5名を標準とする。(3人以下は認めない)

?D指導・訓練は最小限とし、管理性が排除された生活を行う。

?E世話人1名を置き、食事提供、健康管理、金銭管理、余暇利用などの援助.助言を行う。
(6〜7人の入居者であっても、世話人は1名である)

?Fバックアップ施設が必要である。緊急時、職場等における問題、財産管理等の対応・援助および世話人の指導、監督、援助、研修を行う。

?G家賃、生活費は入居者および世話人負担。

?H運営主体は精神薄弱者援護施設、通勤寮等の施設を経営する地方公共団体および社会福祉法人等とする。

?I利用は本人と運営主体との契約によるもので、そこにおける個人の生活は本人の希望により契約が継続する限り続くものである。

この制度創設に合わせて、厚生省はグループホームの設置・運営マニュアルを作成し、『グループホームの設置・運営ハンドブック−精神薄弱者の地域生活援助―』(1989年度版)、さらに平成3年(1991年)には『精神薄弱者の地域生活援助』(改定版)を監修・刊行した。
平成2年(1990年)の福祉八法の改正においては、福祉全般の見直しという趣旨を踏まえて、精神薄弱者福祉のあり方の中で基本事項を盛り込んだ改正が行われ、平成3年(1991年)1月1日より施行されることになった。(なお、大都市特例は平成5年からの施行となっている)主な要点は次の通りである。

・精神薄弱者に対する居宅介護サービス(ホームヘルプ)、短期入所事業(ショートステイ)、地域生活援助事業(グループホーム)等の在宅福祉サービスを規定する。
→社会福祉事業法上第二種社会福祉事業とする。
・精神薄弱者通勤寮及び精神薄弱者福祉ホームを精神薄弱者援護施設として位置づける。
→社会福祉事業法上第一種社会福祉事業とする。
・精神薄弱者相談員について規定する。
・大都市特例を設ける。
これらにより、グループホームは知的障害者の地域福祉に関する法定事業として、役割を果たすものになった。


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