日本財団 図書館


知的障害者福祉研究報告書
平成7年度調査報告  〜精神薄弱者福祉研究報告書〜


第3章 国内調査

2. わが国の知的障害者に関するビデオ作品

―『社会福祉法人東京光の家』の視察報告― No.1

日時:平成7年10月23日(月)13:30〜15:00
出席:古川、中村(日本船舶振興会)
岸、仁木 (テレビマンユニオン)
宮森、小林(福祉開発研究所)       (敬称略)

●目的

わが国において、知的障害をもつ人の生活が収められた映画(ビデオ)作品に、財団法人三菱財団の助成により製作された、「まさあきの詩―盲重複障害者の自立への挑戦」がある。
本作品は、視覚障害と知的障害を併せもつ高橋正秋という青年をとおして、彼の音楽的才能と自立への訓練、そして彼の生活の場である「新生園」(視覚障害と他の障害を併せもつ人を対象とした重度身体障害者更生援護施設)での職員と園生たちの姿を克明に描いたドキュメンタリー映画である。

国内におけるビデオ作品として、本作品を検討するとともに、そこに描かれた生活の場を視察することによって、スウェーデンの知的障害者地域生活援助の紹介ビデオ製作に資するものとした。
以下に、「社会福祉法人東京光の家」視察の報告を行う。

●視察内容

?@「(福)東京光の家」の概要説明
説明:田中のぞみ氏(「新生園」(重度身体障害者更生援護施設)園長)

?A「新生園」(重度身体障害者更生援護施設)の見学
説明:川辺氏(「新生園」訓練課長)

?B「旭が丘更生園」(重度身体障害者授産施設)の見学
説明:加藤保武氏(「旭が丘更生園」園長)

「社会福祉法人東京光の家」の概要

●概要

「(福)東京光の家」は、主に視覚障害と他の障害を重複してもつ人を対象とした救護施設、重度身体障害者授産施設、重度身体障害者更生援護施設及びあんま師、はり師等の免許を有する視覚障害をもつ人を対象とした盲人ホームから構成されている。
重複障害の内容としては、視覚障害と知的障害を併せもつ人が多数である。

■「(福)東京光の家」施設構成



■組織図



●経緯

○「盲人基督信仰会」の設立
(大正8年4月)
日本の盲人に聖書を伝えることを目的として、大正8年4月秋本梅吉氏によって現在の「東京光の家」の前身である「盲人基督信仰会」が設立される。
大正10年当時実施されていた事業は、?@点字図書の貸出、?Aキリスト教福音伝導のための盲人家庭の訪問及び集会、?Bキリスト教関係の点字図書の出版の3事業。

○「東京光の家」と改称
(昭和8年4月)
「盲人基督信仰会」は昭和8年4月に「東京光の家」と改称され、?@保護部門、?A出版部門、?B教育部門の3部門を有した。

○社会福祉法人化
(昭和27年5月)
昭和22年より住宅に困っている盲人のための収容事業を開始し、昭和27年には社会福祉法人となった。

○施設の設立
(昭和30年以降)
昭和30年8月に生活保護法による救護施設となったのち、昭和40年に盲人ホーム「光の家針灸マッサージホーム」、昭和48年に重度身体障害者授産施設「旭が丘更生園」、昭和54年4月に重度身体障害者更生援護施設「新生園」がそれぞれ設立され、現在の活動に至っている。

●障害の種類と程度

「(福)東京光の家」に在籍している人の障害の種類と程度は、以下のように示される。



「新生園」の概要

●概要

「新生園」は、視覚障害と他の障害を併せもつ重複障害者を対象とした、身体障害者福祉法上の重度身体障害者更生援護施設である。
盲重複障害をもつ人の発達指導に重点をおいて、日常生活面での自立を目指した生活訓練、能力を引き出すための作業訓練、また、行動訓練、感覚訓練などを、園生ひとリー人の障害の程度、個性に合わせて実施している。



■「新生園」利用者の障害区分



■「新生園」利用者の年齢構成



■「新生園」への入所経路



■「新生園」退所後の進路



●「新生園」における取組

「新生園」では、障害をもつ人の個々の状況に合わせた個別プログラムを作成し、生活訓練、作業訓練、行動訓練、感覚訓練を実施している。
訓練は、障害の種類、程度に応じて、それを補っていく目的で実施されている。

・障害の種類と訓練の関係
視覚障害によって模倣学習ができない。→・生活訓練によって補っていく。
知的障害によって判断等ができない。
移動動作に遅れが目立つ。      →・行動訓練によって補っていく。

■「新生園」における活動内容



?@生活訓練

・ここで生活している人たちの多くは、環境適応、情緒安定を図ることが非常に難しい人たちである。よって、ここでの生活は、まず「生活訓練」から始まる。
生活訓練は、歯磨き、着替え、家事訓練などの基礎的なことから、日常生活全般にわたる。
・このような生活訓練は、日常生活の中で、遊びながら実施していくことを基本としている。
・訓練のめどは、だいたい5年程度である。
・1つの居室を4名で利用しているが、生活訓練は、居室において職員とのマンツーマンで行うのが基本である。
・この居室での生活訓練は、洗濯物干しから衣類の収納まで日常生活の全般にわたる。

■日課表/週



?A作業訓練

○陶芸室
・陶芸室では粘土の壺等を製作している。
・粘土を手でこねながら、「音」を感じることが、情緒の安定を図ることを助けている。

※7年前から、この陶芸室で作業を行っている視覚障害と知的障害の重複障害をもつ人が、「指押器」と名付けた壺を制作して、障害者の作品出展大会で大賞を受賞した。

○工作室
・工作室では籐細工によるかご等を製作している。
・視覚障害のある人は、空間像がつかめず、「かご」についてイメージすることが難しい。(特にイメージすることが難しいのは、かごの底の部分)
・かごの製作ができるのは、作業を始めてだいたい2年目ぐらいから。

○木工室
・木工室では木材を使った組立作業等を行っている。
・使えなくなったパレットを譲り受けて、それを解体し、又組み立て直すという作業も行っている。
・視覚障害をもつ人は、「はさむ」、「はめる」といった作業をイメージすることが難しい。

○手芸室
・手芸室では、手芸や織り機での織物作業を行っている。
・この作業においては、集中力を持続させることが難しい。



前ページ 目次ページ 次ページ





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION