日本財団 図書館


知的障害者福祉研究報告書
平成7年度調査報告  〜精神薄弱者福祉研究報告書〜


第3章 国内調査

1. わが国の地域生活援助の実践

地域住居・作業所等の見学―2

◇見学日/平成7年10月5日(木) 引率:午前/大垣主任「旭寮」
午後/渡辺氏「太陽の園」

◇見学先

○午前(9:30〜12:00)



〇午後(14:30〜17:30)



■『工房くれよん』



[概要]

○太陽の園の工芸科七宝班の作業場として、父母の会の協力を得て伊達市内に開設した。
○太陽の園に長期在園している方の中に、自分たちも地域で働きたいという思いが強くあった。そこで、できることから始めようということでここを開設させた。
○開設から7年経つが、メンバーは開設当初から半分ぐらい入れ替わっている。
○この作業科を出た人は、これまで20名程度。それらの人は地域の企業に就職したり、違う作業科に移ったり、園内に戻ったりしている。
○同じ作業科でも、ここの作業所を希望する人は多い。しかし障害の重い人が増えていることもあって、ここ2〜3年は入れ替わりはない。
○通勤形態は、自宅からが2名、アパートやグループホームからが5名、太陽の園の通所部からが7名、太陽の園の入所部から6名の方が通っている。
○地域の人が自由に行き来できるような場所にしていくために、「くれよんバザー」(年2回)と七宝体験教室を開催している。
○作業の工程を詳細に分析して、どのような作業に、どのような障害を持つ人が向いているのかというラインができており、細かく役割分担をして、流れ作業を行っている。
○職員のやることは、デザインの決定と、一部使用する劇薬の管理、ボールペンでデザインを記入する作業。あとは営業的なことである。
○製品の値段は15,000円のものから150円のものまで。
○マグネットや画びょうで留める150円のものも出しているが、全て手作りで行っている手間を考えるとどうしても赤字である。
しかし、作品としては、このクラスのものが一番多いので、たくさん買って貰おうと、この値段を設定している。
○小さいもので、なるべくシンプルで、みんなが作成でき、なおかつ買ってもらえる質のいいものということで、職員は試行錯誤しながらデザインを考えている。
○常設店舗として15の店舗で作品をおいて貰っている。
(説明:作業科職員の方)

◇外観:1階が工房くれよん 2階は自立アパート「ヴィラヒラモトB」



◇作業風景



■『(株)オオヤ』



[概要]

○この事業所には、精肉のスレーター等、雇用促進協会の助成金による機械設備が4台導入されている。
○これは、障害を持つ人を1人雇用すれば、雇用促進協会から機械設備の助成金が受けられる雇用促進制度を活用したものである。旭寮のコーディネーターである大垣主任さんはこれを、障害を持つ人を企業へ送り出すときの「嫁入り道具」だと仰っていた。
○この事業所には元園生の3人の姉弟の方が正雇用されており、訪問したときには、精肉の筋をとって、整える作業を行っていた。
(説明:大垣主任「旭寮」)

◇オオヤミート 外観



■『(株)五光舎クリーニング』



[概要]

○(株)五光舎クリーニングは職親会の会長が事務を務める企業である。
○現在、22名が正職員として雇用されているほか、11名の実習生を受け入れている。
○作業はそれぞれの能力に合わせて、分担された流れ作業になっており、初期段階では援助職員と共に仕分けの作業を行っている。

(説明:大垣主任「旭寮」)

◇作業風景



■『(株)ポニー製菓』



[概要]

○モデル工場の建設は3ヵ年計画でポニー製菓の社長と話を進めてきたものである。現在北海道内に40ヵ所あるモデル工場のうち、36番目に開設された。
○労働省や雇用促進協会に認められているものではないが、ここには企業内授産所が設置されており、12名の方が作業を行っている。
○認められていないのは、作業所が厚生省の管轄であるのに対して、モデル工場が労働省の管轄だからである。
このため、ここでは作業所としての看板も掲げていない。
○作業の内容は、生産ラインの一番最後の包装部門を作業所が担っている。
援助を行う職員が配置されており、サボーテッド・エンプロイメント(援護就労)の1形態となっている。
食事や休憩の時間帯も、社員旅行等の福利厚生も他の正職員と一緒である。
○もともとチョコレートの箱詰めなどの作業は、洞爺温泉街の主婦の内職であった。その頃は、トラックで20軒の家を廻り、それを回収していた。
そのような箱詰め作業は、知的に障害を持つ人でもできる作業であった。そこで「1ヵ所でこの作業を行えば、トラックが20軒廻らなくてもよくなり、またその作業所を工場内に設置すれば、トラック1台と運転手1人分の人件費が浮くことになる。」という話を社長にもちかけた。これが企業内授産所の設置の発端である。
○障害者だから5年、10年も賃金が上がらないなどの社会環境上の問題に対して、だれかが、障害を持つ人の労働者としての権利保証を代理行為、支援をしていかなければならない。そのような支援を行うスタッフがいるのが地域援助センターである。
(説明:大垣主任「旭寮」)

◇ポニー製薬 外観



◇作業風景



■『第一青葉学園』



[概要]

○在籍者20名のうち、地域住居、園内生活実習所で実習を行っている人が5名いる。
現在は5つの居室(4人部屋)を3名づつで利用している。
1部屋を大人3名で利用するのはやはり窮屈であり、プライバシーを守ることは難しい。
○基本的な目標は、将来、まちで生活できるようになることであり、そのトレーニングをここで行っている。
○ここでは昭和63年から平成4年まで短期自立訓練事業として、2年間をめどとして自立訓練を行い、クリアできない場合は施設を移動するという短期訓練事業を行っていた。
○その事業をやめたのは、近年障害の軽い人がどんどん卒園していくのに対して、そのあとに入園してくる人の障害が重く、とても2年では自立できない状況になったためである。平成5年からはそれぞれの人のペースに合わせて進めていくようになっている。
○今ここを利用している人の中には障害の重い人とともに、一度社会にでて、トラブル等により行き場を失った人たちもいる。それらの人たちは、障害の程度も軽度で職場実習などは非常によくこなして評価も高かったのだが、生活面の自立が短期間では並行して身につけられなかった。

(説明:渡辺氏「太陽の園」)

◇「第一青葉学園」食堂・リビング



◇「第一青葉学園」居室



■『木工科』



[概要]

○糸のこぎりによる切り抜き作業から紙ヤスリかけ、塗装までの一連の作業を行っている。
○以前は、生産力、技術力も高く結婚式の引き出物などの注文が多くあったが、最近は製作できる人も限られており、生産量は減少している。
○園内の作業科の配属先については、最初に全ての科を経験したあとに本人の適正等を配慮しながら決めている。
(説明:渡辺氏「太陽の園」)

◇木工科作業場



■『C公宅-25号』



[概要]

○ここでは、グループホームへ移るためのトレーニングとして3〜4人で共同実習を行っている。
○ここでの実習期間は長い人で3ヵ月くらい。1ヵ月程度の人もいる。
○月に最低2回は、買い物にまちへ外出する日が決められている。その際には「何を買うのにいくら必要」という予定表を事前に本人に作成して貰って、その金額を口座から引き落として渡している。
○ここを利用している人は、職場実習の収入が平均して4万円ぐらい、それと年金を合わせると10万円程度の収入がある。
○生活面の作業については、それぞれ当番を決めて分担している。例えば秋から冬にかけて、一番心配なのは火の始末の問題であるが、各住居の当番が安全点検を行い、それを当直職員へ報告する形態をとっている。
○食事については、1つのターミナルで作ったものをとりに行く仕組み。ご飯は各住居で炊飯している。
(説明:渡辺氏「太陽の園」)

◇園内自活訓練棟(元の職員住宅) 外観



◇園内自活訓練棟 リビング



■『伊達きのこ園』



[概要]

○仕込みから収穫、そのあとのおがくずとりなど作業は多岐にわたる。
○きのこ栽培は単純作業として知的障害を持つ人を受け入れているところが多い。
○大きい企業の流れ作業を好む人もいれば、このきのこ園のような家庭的な雰囲気を職場として好む人もいる。
○今ここに通っている実習生の知的面は決して高くはないが、特に大きな問題を抱えてはおらず、安定群として事業主さんからは評価されている。生活面の技術的なことは援助体制の中でカバーできるのである。
(説明:渡辺氏「太陽の園」)


■『(株)中央青果』



[概要]

○野菜を洗浄梱包して、出荷できる状態にする作業を手伝っている。
○作業の時間は午前8時から午後5時まで。
○この日は、ねぎの汚れた皮をはぐ作業を行っていた。園生の方が行っていたのはパートの主婦の方が機械ではいだ皮をほうきで一ヵ所に集める作業である。
○「早くまちで実習したい」という子はそれだけがんばりを見せる。
○パートの主婦の方にとっても子どもと同年齢ぐらいで、かわいがってくれ、園生の方もこのコミュニケーションを楽しみにしている。

(説明:渡辺氏「太陽の園」)

◇作業風景(中央でねぎの皮を集める作業を行っているのが園生の方)



■『(株)ウロコ』



[概要]

○実習生のうち女性は品物のラップ作業、男性は各店舗へのワゴンの積み込み、配送助手を行っている。
○作業時間は朝9時から午後3時まで。最も遅くて午後4時までの作業となる場合もある。
○ここでは鮮魚、肉類も扱っているが、鮮魚や肉類をさばく作業を行っているのは、この事業所に勤めて8年になる元園生の方。
○この方は今、まちの中のグループホームで生活している。
○はじめは、何もできなかったが、今では魚や肉類の扱いは全てこの方に任せている。
○朝出社して、まず何から仕事を始めるのかということがマニュアル化しており、特にこちらから指示を出す必要はない。
○この方は、非常にきれい好きで、衛生面に気を使わなくてはいけないこの仕事に最適の条件を持っていた。
○以前、作業の時間帯を変則にしたときに自分を特別扱いしないでくれという訴えを受けた。
○その人の長所を伸ばすやり方で作業をしてもらっている。
○「正直言うと、今辞められたら一番困る人です」という言葉で、この元園生の方は事業所の幹部から評されていた。

(説明:事業所幹部の方)

◇作業風景(実習を行っている園生の方たち)



◇この事業所に勤めて8年になる元園生の方
魚肉類を取り扱う場の片づけを行っている。





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