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知的障害者福祉研究報告書
平成7年度調査報告  〜精神薄弱者福祉研究報告書〜


第3章 国内調査

1. わが国の地域生活援助の実践

地域住居・作業所等の見学―1 No.2

『太陽の園』の概要

説明:吉野氏(太陽の園「第一青葉学園」学園長)
日時:平成7年10月5日(木)13:10〜14:00 於:園内地域共同作業所「やすらぎ」

●「太陽の園」開設からの経緯
太陽の園が開設した昭和43年当時は、北海道に入所型の施設がほとんどなく、この分野において北海道は遅れているといわれていた。
北海道における大きな受け皿として、太陽の園が担った役割は、「センター的な役割」、「児童から成人に至るまでの一環処遇」、「社会自立の促進」、「研修・研究」というものであった。
北海道における大きな受け皿として、「センター的な役割」はある程度果たしてきたといえる。
「一環処遇」ということでは、児童期、成人期とそれぞれについて一定の対応はできている。しかし基礎的なことも含めてトータル的な対応ができているかといえば、まだまだ課題は残っていると感じている。
「社会自立を進める」ということでは、当初からそのような目標を持って、システムの構築を図ってきたので、ある程度その役割は果たしてきている。
ただ、今は比較的軽度の人が社会自立を進めているので、今後は障害が重い、軽いということは関係なく、1人の人間としてふつうに地域で生活できるシステムや方法を開発していく必要があると思っている。

■太陽の園の概要



●卒園者の状況
当初から、4つの目的を使命としてスタートしてきたのだが、まず社会自立の面については、これまで300名近くの人が就労という形で卒園していった。
昭和55年から平成元年にかけて比較的就労自立した人が多くなっているのは、障害者基礎年金、グループホーム制度などの時代的な環境の変化が一定の要件となっている。
平成4年以降の就職者がほとんど一桁になっているのは、障害の軽い人が出て、今施設への入所を希望する人のほとんどが重い人であるという経緯がある。そのようなことから退所率も下がってきている。

■卒園者の状況



●組織機構
施設の組織機構としては、総務、管理等のセクションと、指導訓練としての生活拠点である「学園」、日中のデイケアとしての作業所のような作業指導のセクションと、診療所、発達援助センターのセクションと概ねこの3つセクションによって組織が構成されている。

■「太陽の園」組織機構



●施設体系
1学園100名で、これが5つのユニットに分かれており、廊下でそれぞれがつながっている。
20名という数は生活単位としては多い人数であるが、一緒に生活する人数が多くなればなるほど生活のしずらさにつながっていくと感じている。
先進的なところでは全室個室というところもあるが、われわれのところでは北海道が予算をつけてくれないとどうにもならないのが現状である。

●職員の状況
職員は臨時職員も含めて約200名である。生活の場における20人の利用者に対して職員は基本的に3名配置として交代勤務制をとっている。
また作業の場では20人に対して職員は2人の配置である。
障害の重い人に対しては、20名に対して職員が4名配置で、日中、夜間それぞれ2人の職員が常時勤務している。
われわれは、24時間ケアということで常にだれか職員がいるという体制をとっている。1学園に5つのユニットがあるので、宿直も5名、重度棟については7名の職員が宿直を行っている。

■職員の配置(正職員)



●予算の状況
予算については、北海道から委託費という形で毎年事務費、事業費を受けている。
これらの他に授産会計というものがある。授産施設の場合は作業に対して賃金還元をすることとして、特別会計が設けられているのである。
太陽の園の場合は、一定の授産科目を指定しており、一定度の生産目標をおきながら、賃金を還元していくという形を取っている。
今は障害の軽い人に対して、障害の重い人が多いということもあり、あくまでも生産のための場ではなく、労働手段を学んでもらう場という形態である。
そのようなことから収益はそんなにあがらないし、どうしても年々赤字になっている。
授産予算は法的にいえば、授産施設で作業している100名に対してだけ還元されるものである。しかしここでは、デイケアの拠点として作業施設を作っており、そこでは授産施設の人も更生施設の人も児童施設の人も利用している。授産施設の人だけに還元して、他の人には賃金を還元しないということはおかしいので、それらの人を含めた340人ぐらいの人に作業日数や能力に応じて現金で賃金を還元している。
そのことからどうしても一人あたりの賃金は少なくなってしまうのだが、1番多く貰う人で15,000円、少ない人で500円の賃金が支給されている。

●入所者の状況
全道からの利用がある。多くは札幌から南の人たちで、7割を占めている。
入所の定員は400名で、昭和63年からは定員20名の通所型の授産施設を認可して貰った。
基本的に通所というと、在宅の人を対象としたもので、家から通うというイメージのものであるが、就労自立の形で卒園できない人も地域で生活できるようなシステムをどうしても作りたかった。企業就労という形で卒園していけない人たちでも一定度のトレーニングによってある程度の生活はできるのである。
親の会などの協力により福祉的就労の場として地域共同作業所を作ってきたのだが、それでも働く場所はなかなか増えていかないという事情もあり、福祉的就労の場の1つとしてグループホームから通うことができる通所授産のシステムが欲しかった。
そのように通所のシステムを作ることによって今まで、24時間施設にどっぷり浸かっていた人が、まちの中にでることが可能になったわけである。
われわれとしては20名ではなく40名、60名にしたいと北海道に申し出ていたのだが、これ以上は受入れてもらえず今は20名の枠の中で行っている。

■入所者の状況(平成7年4月1日現在)



●在園年数・年齢構成・障害の程度
障害の重い人について、在園年数はかなり長期化している。これらの人も地域の中で何とか生活できるようにしたいという気持ちはあるが、現実としては難しい面がある。
年齢構成は20代から30代が最も多い。全入所者の平均年齢は32.2歳である。
障害の程度は、重度の人が約65%、中皮の人が約23%、軽度の人が約12〜13%という構成である。
基本的には施設を人生においてずっと使うところとは思っていないのだが、結果として長期に利用する人がいる。親御さんの中にも年をとってからもずっとお世話して欲しいという気持ちもあるかと思う。しかし本人にしてみれば、決してそれは望んでいないだろうと感じている。そこをどのような方法で違う環境を提供できるかということが大きな課題である。

■在園年数(平成7年4月1日現在)



■年齢構成(平成7年4月1日現在)



■知的障害の程度(平成7年4月1日現在)



●労働習慣
労働習慣と生活習慣の2本を柱に取り組んでいる。日中は主に労働習慣を中心にトレーニングしており、本人の興味、段階に合わせた作業科が14班設置されている。
みんないずれかの作業科には必ず所属していて、このような作業を媒体として労働習慣を学んでいくことを目的にしている。
他の人とコミュニケーションが図れるとか、簡単な指示であれば内容を理解できるとか、そのような労働習慣を学んで貰う。

■作業科の状況(平成7年4月1日現在)



●生活習慣
生活習慣については、学園が中心になるが、自分の身の回りこと、排泄、入浴、食事などの他に、自分の気持ちのコントロールの仕方であるとか、人間関係、金銭のこと、社会施設の利用方法などを学んで貰う。
そして、一定度の段階にきたら、次のステップへ移ることになる。ただ施設と実社会の間にはかなりのギャップがあるので、就労している人の場合には通勤寮などのシステムを利用する。しかし通勤寮が万床で利用できない場合に、太陽の園から直接企業就労や地域生活へ移ることになると、ますますギャップが生じることから、その前に第2、第3の段階ごとのステップが必要となる。
そのためにここでは職員住宅の空きを利用して、生活実習という形でそこへ移り、まず20人の集団から離れて本人たちだけで生活して貰う。職員は遅勤として夜間巡回して指導を行う。

さらに次のステップとして、施設の外にトレーニングの場として市内に借家をかりる。そしてもっと現実度の高い地域の中で、3〜4人で生活実習を行う。職員は遅勤として廻るけれども、職員住宅での実習に比べるとずっと少ない回数になり、自分たちだけで生活できるようにトレーニングを行う。

労働習慣としてのステップは、一定の段階にきた人については地域の事業所に協力して貰って、職場実習を行っている。はじめは、まず体験ということで職員が一緒について行って仕事をさせて貰い、一定の時間働くとか、他の人たちと仕事をするとか、施設の中とは違った形態を体験して貰う。
その次のステップは、職員がついて行かないで、職場実習をする。さらに次の段階にくると実際に就職できそうな人については、就職先を探す。そして就職先が決まった段階で、より実際的な実習をさせて貰うという段階を経て就労自立ということになるわけである。

■就学・作業別人員(平成7年4月1日現在)



●まとめ
太陽の園には開設時から入所して、以来25年ここで生活している人もいる。
そういう人たちの人生にわれわれは何ができたのだろうか、ということを考えると、やはり障害が重い、軽いということは関係なく、みんなが地域で暮らせるような社会環境を整えていく必要があると感じている。

『発達援助センター』の概要

説明:山本氏「発達援助センター」
日時:平成7年10月5日(木)14:00〜14:30 於:園内地域共同作業所「やすらぎ」

●発達援助センター事業の概要
開設は平成3年9月。就学前の障害児を対象として、それまでは、地域によって格差のあったサービス体系を北海道のどこで生まれたとしても、同じようなサービスを受けることができるように早期療育サービスをシステム化した。
北海道早期療育システム事業の中核的施設事業を実施するとともに、発達障害の診断・評価、相談、療育、関係職員への研修事業を行っている。

●主な事業の概略

○母子通園センター
北海道を67の圏域に分け、そこに母子通園センターを設置し、心身障害児の日常生活に密着した通園による療育訓練の場を確保している。
課題としては、通園方法の問題があり、現在の67カ所をもう少し細分化できないかと感じている。

○移動療育センター事業
北海道全道域を対象として、太陽の園の職員と旭川療育センターの職員によって、医師、OT、PTの混成チームが組まれ母子通園センターに通っている児童に対して総合診断・評価を行っている。

○母子訓練事業
心身の発達に遅れ、またはその心配のある乳幼児とその親を対象として4泊5日の宿泊訓練を行い、総合的な診断評価に基づいた家庭療育プログラム作りの援助を行っている。親のニードは非常に高い。現在職員がローテーションを組みながら年に13回開催している。

○生活能力訓練事業
地域の共同作業所に通っている人や高等養護学校に通っている15歳以上の心身障害児者を対象に、夏休みと冬休みを使って年に2回、10人ずつを在宅者の支援事業として、施設における宿泊訓練の中で集団生活や作業の体験及び各領域の評価等を行っている。

○乳幼児健診支援事業
近隣地域の要請に基づいて乳幼児健診に発達相談員を派遣している。

●課 題
今後、太陽の園の園内外の多様なニーズに対応していくためには、より高度の専門療育機能を整備し、療育活動の向上を図っていく必要がある。
特に、行動障害等により対応が困難な利用者や、多様な障害に応じた治療プログラムの開発等、専門的な療育体制を確立することが必要となっている。そのような状況に対応できる総合的で、専門的な人材を確保していくことが必要である。
また、園内外のニーズに対応できるように、充分な数、広分野の専門家を配置して、質的にもセンター的機能を発揮できるよう整備拡充していくことが急務となっている。

■発達援助センターの運営体系

1. 組織図



2. 事業体系図



3. 職種別職員配置表



■北海道総合リハビリテーションシステム概念図



■障害児早期療育システム推進事業の展開





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